激流に生きる!謎の水中モグラ

第264回「激流に生きる!謎の水中モグラ」

2012/3/18(日)午後7時30分~

日本の渓流に、水中を自在に泳ぎ、自分の体ほどもある魚を捉える名ハンターがいます。カワネズミです。体長は10センチほど。名前にネズミとつきますが、実はモグラの仲間。地上から水中へと進出した“水中モグラ”です。カワネズミは日本各地の渓流に生息していますが、長年通い続けるベテランの釣り人ですらほとんど見たことがないという、謎に満ちた動物です。今回、研究者とともに、富士山を間近に望む川でカワネズミに長期間密着。驚きの暮らしぶりを撮影することに成功しました。カワネズミは激しい流れをものともせずに水中を泳ぎ回り、滝さえよじ登って獲物を探し求めます。ひとたび魚を見つければ鋭い牙でガブリ。相手がどれだけ暴れても決して離しません。相手の動きが弱くなった瞬間、一気に岸辺まで引き上げます。その狩りの様子は、まるで水中の格闘技です。狩りを数時間おきに繰り返し、魚を食べ続けるカワネズミ。これほど大食漢なのは、モグラの仲間であることの宿命でもあります。モグラの仲間は体が小さい上に脂肪が少ないため、体の熱が奪われやすいのです。半日食事ができないだけで死んでしまうこともあります。特にカワネズミがすむ水中は、地上に比べ過酷な環境です。狩りの技を磨き上げることで、水中という未知の世界に進出し、たくましく生き抜いてきたカワネズミ。その豪快な生きざまを、美しい渓流で追います。

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取材こぼれ話

山梨県都留市 編

超難敵!幻の水中モグラを追え

「水中を泳ぐモグラがいる」。
数少ない情報を頼りに私たちが撮影地である山梨県都留市の渓流を訪れたのは、暖かな日差しがふり注ぐ4月のこと。まずは、釣り人たちからカワネズミの目撃情報を集めることにしたのですが、ほとんどの人が「知らない!」、「そんな生きものいるの?」という反応でした。目撃者にめぐり合えたとしても「数十年前に一度だけ」、「姿を見たのはほんの2〜3秒だけ」と、撮影を前に不安になるような答えばかり・・・。

カワネズミの観察を続けて30年近くになる研究者、北垣憲仁先生をもってしても、カワネズミを目撃するのは容易ではないとのこと。先生も最初、カワネズミの姿見るのになんと「一年」もかかったといいます。でも話を聞いて納得、カワネズミの行動って次のような特徴があるからなんですね。

(1)昼も姿を現すが、主な活動は夜、暗闇の中。
(2)姿を現しても、移動は常に水の中。
(3)何より動きが“超”俊敏。

幻の水中モグラ。その“泳ぐ姿”はもちろん、“狩りの瞬間”なんて果たして撮影できるのか!?無謀とも思えるチャレンジが始まりました!

最新機材+忍耐力=スクープ映像!

撮影には、真っ暗闇でも撮影ができる『赤外線カメラ』、超スローモーション映像が撮影できる『ハイスピードカメラ』など、10台以上のカメラを用意。24時間体制で撮影に臨みました。

撮影では、カワネズミに警戒されないよう、夜でも照明を一切つけずに見張りをしました。まっ暗闇の中、睡魔と闘いながら赤外線カメラのモニターをひたすら見つめ、カワネズミが現れるその一瞬を待ったのです。まるで修行のような日々・・・。

やがて苦労の甲斐あって、カワネズミがカメラの前を通るようになりました。でも姿を現すのは、一日に多くても3回ほど。しかも動きは超高速。猛スピードでカメラの前を通りすぎ、ほんの2、3秒でいなくなってしまいます。よそ見はもちろん、瞬きさえもはばかられる緊迫した時間が続きました。

そうした日々の積み重ねのおかげで、豪快な狩りの一部始終を撮影することにも成功したんです。撮影は足かけ7か月。研究者、カメラマンたちの強靭な忍耐力なくしては、撮影しえなかったスクープ映像の数々を是非、ご覧いただけたらと思います。