コウノトリ 46年ぶりの巣立ち!

第074回「コウノトリ 46年ぶりの巣立ち!」

2007/10/14(日)午後7時30分~

2007年7月31日、兵庫県豊岡市で、日本の野生下では、実に46年ぶりとなるコウノトリのヒナが巣立ちを迎えました。コウノトリは翼を広げると2メートルになる大型の鳥で、田んぼや湿地など水辺で魚やカエルなどを食べて暮らします。かつては本州各地で普通に見られたが、1971年、日本の野生のコウノトリは絶滅。現在は中国やロシアに二千羽ほどが生息するだけです。そこで日本最後の生息地だった豊岡では、コウノトリを再び野生に蘇らせようと、40年以上前から人工繁殖の試みを行ってきました。
2005年秋からは増やしたコウノトリを野外へ放し、繁殖させる試みが始まりました。ところが、繁殖どころか、せっかく放しても元の飼育施設に戻ってしまうなど、なかなか野生に根付きません。そんな中、2007年春、2組のカップルが誕生。地元では、なんとかヒナの誕生をと、人工の巣作り場所を設置し、田んぼに生きものを増やす取り組みにも力を注ぎました。ところが、コウノトリは危険な電柱で巣作りを始めたり、突然巣を放棄してしまったりと、ハプニングの連続。やっとのことで誕生したたった1羽のヒナにも強敵・カラスが襲いかかります。
取材班は半世紀ぶりの野生のコウノトリが巣立つまでの2年間に密着。数々の困難を乗り越えてヒナが巣立ちを迎えるまでの知られざるドラマを紹介しました。

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取材こぼれ話

兵庫・豊岡市 編

幸せを運ぶコウノトリ

コウノトリはとにかく大きい鳥。翼を広げると2m、立っている高さが1m10センチ、子供の背丈ほどもあります。こんな鳥が田んぼにいたり、電柱にとまっていたり、人や車の行き交う町の上を飛び回ったりするのですから迫力満点です。 ところで、コウノトリ、といえば“赤ちゃんを運ぶ鳥”のイメージが強いのですが、これはもともとヨーロッパに暮らすコウノトリの仲間、シュバシコウにまつわる伝説。実は日本のコウノトリも“おめでたい鳥”として私たち日本人になじみ深い鳥なのをご存じでしょうか? 有名な“松に鶴”の図柄、これはいわゆる“鶴”ことタンチョウではなく、コウノトリを描いたものだと言われているんです(実はタンチョウは木にとまれません!)。コウノトリはそれだけ昔から日本人に身近に親しまれている鳥なんです。

46年ぶり 歴史的瞬間!までの日々

今回の舞台、兵庫県豊岡市は、日本で最後までコウノトリが生息していた場所。ここで、一度絶滅してしまったコウノトリを野生に蘇らせようと、飼育で増やしたコウノトリを野外に放す取り組みが行われています。その放されたコウノトリの間に待望のヒナが誕生し、ついに、この夏、日本で野生では46年ぶりにヒナが巣立つ光景がよみがえった、というわけです。 ところが、この歴史的瞬間にたどり着くまで、その取材はまさにハラハラドキドキの連続でした。野生で暮らし始めたコウノトリの“初めての子育て”をとらえるべく撮影を開始したものの、無事に巣を作れるのか? そして無事にヒナが生まれるのか・・・? コウノトリたちの行く末に常に心配はつきませんでした。何しろケージの中で生まれ育ち、初めて野外で暮らし始めたコウノトリたちですから、次から次へとハプニングが起きてまうのです。今年のヒナ誕生はもう絶望的か、番組完成は来年か・・・!? と何度思ったことでしょうか。 人間に育てられた鳥が野生で生きていくのはとても大変です。コウノトリのように人間が育てた鳥を野外へ放す、“野生復帰”の取り組みは、絶滅の危機にある生きものを救う手だてとして世界各地で始まっています。でも、その成功率はわずか1割ほどだそうです。ましてやコウノトリのような大型の鳥を人里に放すのは世界初と言っても良い大きなチャレンジ。何しろ周りの環境はかつてコウノトリがいた頃とは大きく変わってしまっています。 再びコウノトリとともに暮らすために、地元では様々な準備をしています。この巣塔もその一つ。

巣立ちはいつ?

波乱を乗り越えてついに待望のヒナが誕生!しかしそれを喜ぶまもなく、次の心配が襲ってきました。「果たしてヒナはいつ巣立つのだろうか?」 なんといっても日本で46年ぶりの瞬間、撮り逃しては番組になりません。ところが、コウノトリはすでに日本では絶滅しているため、野外での生態に関する詳しいデータはほとんどないんです。 これまで飼育で育てられたコウノトリは二ヶ月余りで巣立ちを迎えています。そこで、ヒナが生まれて二ヶ月ほどたった7月19日から、巣立ちの瞬間を狙うべく本格的な張り込みを開始。巣の上でヒナが羽ばたくたびに「いよいよか!?」と手に汗にぎる日々が始まったんです。 そんな今回の撮影に欠かせなかったアイテムの一つがビーチパラソル。といっても、決して夏のビーチで遊んでいたワケではありません。こちらは、ヒナの巣立ちをじっとひたすら待ち続けるカメラマンの姿。何しろ炎天下の田んぼの中で一日中ヒナをねらい続けるのです。こうしてビーチパラソルや傘をさし、更に日焼け止めをたっぷり塗ったにもかかわらず、撮影スタッフはみな、どこのリゾートに行った人にも負けない日焼けをすることになりました・・・。

汗と涙の巣立ち撮影

ところで、ヒナは一体どんな瞬間に巣立つんでしょうか。親鳥の後について巣から出ていくのか? さかんに羽ばたいてそのまま飛び立つのか? 何かサインがわかれば撮影しそこねる心配も少なくなります。期待を込めて飼育のベテランに聞いてみました。すると答えは予想外に厳しいものでした。 「何の前触れも無く飛ぶんですよ。じっーと立っていて、何か踏ん切りをつけるみたいに、突然飛ぶことが多いです」 これではもう、一瞬たりともヒナから目を離すことができません!日の出前から日が暮れるまで、毎日なんと14時間、日差しを遮る物のない炎天下で、ひたすらヒナを見張り続けました。 このヒナの巣立ちを待っていたのは、我々「ダーウィンが来た!」スタッフだけではありません。行動調査をしている研究者、新聞・テレビなどマスコミ各社、そして大勢の地元の人々。さらには大阪や京都、福井などからはるばる訪れる人々もいました。普段は静かな田んぼの一角に、多い日にはなんと200人近くもの人々が集まったんです!ヒナが羽ばたくたびに、あたりから歓声があがりました。しかし、どうしたことか、来る日も来る日もヒナは飛び立とうとしないのです。 そして過酷な張り込みが始まって13日目の7月31日。今日ももう飛ばないか・・・と、みんながあきらめかけた午後2時すぎのことです。本当に、何の前触れもなくヒナが飛び立ちました!そのあまりに見事な飛び方は、一瞬親鳥が飛んでいるのではないかと見間違えるほど!こうしておよそ半月も続いた過酷な日々が終わりを告げたのでした。  今か今かと待ち続け、ようやくとらえた巣立ち。感動のシーンにご期待下さい!