密着30年 知られざるツキノワグマ

第553回「密着30年 知られざるツキノワグマ」

2018/6/10(日)午後7時30分~

本州最大の陸上動物ツキノワグマ。誰でも知ってる動物だが、山の奥で暮らすうえ警戒心も強いため、観察は極めて困難。「日本で最も謎に包まれた動物」と言われるほど、その生態の多くはわかっていない。

その姿に迫ろうと、動物カメラマン横田博さんは、“クマ銀座”と言われる栃木県足尾山地で30年近くにわたって撮影を続けてきた。その超貴重な映像記録は1000時間以上に及ぶ。そうした膨大な映像から見えてくるのは、「猛獣」と思われがちなイメージを覆す、愛情たっぷりの子育ての様子や、クマ同士無駄な争いを避ける平和的な暮らしだ。

横田さんは、13年にわたって、「ジロー」と名付けたメスに密着。幼いジローがやがて親になり、わが子を守り育てる姿を克明に記録することに成功した。2匹の子どもを大切に守り育てるジローにある日、とんでもない事件が起きる。それがオスの“子殺し”。繁殖期のオスは、子連れのメスを見つけると、子グマを殺してメスに交尾を迫ることがあるのだ。横田さんは、その一部始終を世界で初めて記録。体格差が倍近いオスに果敢に立ち向かうジロー。しかし奮闘むなしく、2頭のわが子を失ってしまう。想像を絶する過酷な子育てを続ける母グマの波乱に満ちた半生を通じて、最も身近なクマの、誰も知らない素顔に迫る。

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取材こぼれ話

密着30年 知られざるツキノワグマ 編

横田流クマの探し方

今回の番組は、動物カメラマン・横田博さんが1988年以来約30年にわたって撮り続けてきた1000時間を超す膨大な映像の中から、選りすぐりのシーンを集めて制作しています。我々取材班は、その最後の撮影の2年間(2015年春〜2017年春)に密着しました。

そこで驚いたのが、横田さんのクマを見付ける早さ。ツキノワグマは体が大きいと言っても、少し離れれば、もう点のようにしか見えません。しかも、黒いので簡単に山の景色の中に溶け込んでしまいます。広い山の中でクマを探すのは、“わらの中で1本の針を見付けるようなもの”なんです。それを横田さんは、1kmも離れた斜面にいるクマを、移動しながら瞬時に見つけてしまうんです。我々は、そこを指差されても、全くわかりません。双眼鏡で確認して、やっとクマだと分かるほど。

まさに千里眼とでもいうべき秘密は、やはり30年間もクマを見続けてきた経験です。横田さんは年間100日以上、クマを探しに足尾の山に入ります。ということは、これまで約3000日、足尾の山の風景を見続けていることになります。その結果、斜面の木の一本一本、岩の一つ一つが、頭の中に焼き付いているんです。ですから、そこにポツンと見慣れない黒い点が現れると、すぐに「クマだ!」と反応できるんです。毎回毎回、驚かされた2年間でした。