翼で子育て がんばれ!タマシギ父さん

第551回「翼で子育て がんばれ!タマシギ父さん」

2018/5/27(日)午後7時30分~

「鳥の脚は2本」なのは、小さな子どもでも知っている。ところが、ダーウィンが来た!取材班は、関東某所の田んぼで脚が10本ある鳥を発見してしまった!

その名はタマシギ。平安時代の短歌にも詠まれているほど、古くから人間の身近な場所に暮らしてきたが、近年、田んぼの環境が大きく変化し、各地で激減。警戒心も強い事もあって、なかなかお目にかかれない「幻の鳥」になってしまった。

取材班は、この幻の鳥に細心の注意を払って3ヶ月間密着。すると世にも不思議な夫婦関係が明らかに。多くの鳥はオスがメスに求愛するが、タマシギは逆。メスがオスに猛アピールする。ところが、卵を産むとメスの態度が急変。卵を置いて巣を去ってしまうのだ。子育ては全てオスの役目だ。

オスの子育ては愛情たっぷり。密着すると奇想天外な子育て術が見えてきた。注目は、翼を巧みに使ったワザの数々。生まれたばかりのヒナ全員を翼で抱きかかえる「まとめてだっこ」は、体温を保てないヒナを温めると同時に天敵からも守る、究極のワザ。一方、獲物の多い田んぼにやってくるライバルは、翼をいっぱいに広げて相手に襲いかかる「翼広げ」で追い払い、子ども達に安心して食事をさせる。飛ぶための翼を、子育ての大きな武器にしているのだ。

ちなみに、タマシギの脚が10本になるのは、「まとめてだっこ」の時。抱きかかえられた4羽のヒナは、体がすっぽりと包まれて、脚だけが翼の下から飛び出ているから。お父さんの脚と合わせて10本の脚がずらりと並び立つ様子には、一瞬ギョッとするが、実はタマシギ父さんの愛情たっぷりな子育ての姿だったのだ。

日本の田んぼでひっそり暮らすタマシギの姿、じっくりご覧ください!

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取材こぼれ話

翼で子育て がんばれ!タマシギ父さん 編

「幻の鳥」タマシギを探せ!

今回の主役、タマシギは田んぼに暮らす鳥です。ですから、取材班の最初の仕事は、田んぼでタマシギを探すこと。これがなかなか大変でした。なにしろタマシギは絶滅危惧種に指定されており、数が圧倒的に少ないんです。今回、特にタマシギが多いとされる場所を探したのですが、それでも1?四方に1羽いるかどうか。しかも、メスは繁殖期の日中は草むらに潜んで、ほとんど出てきませんし、オスは保護色な上、人の姿を見ると稲の影に隠れてしまいます。一日中探しても見つからない事がほとんど・・・。地元のバードウォッチャーの皆さんが結成した「タマシギ探し隊」の強力なご協力があって、なんとか撮影に成功しました。ご協力頂いた皆様、ありがとうございました。

さすがは田んぼの鳥、イネの生長に合わせて子育て?

観察を続けていると、タマシギの繁殖は田んぼのイネの成長をうまく利用していることがわかってきました。まず、田植えの直後のころに、メスがオスに求愛。この時期はイネがまばらでオスとメスが出会いやすいんです。イネが生長してくると、株と株の間の敵から見つかりにくい場所に好んで巣を作ります。イネがすっかり伸びて、田んぼは緑のじゅうたんで覆い尽くされるころ、ヒナが巣立ちます。茂ったイネが目隠しとなって、ヒナを上空の天敵から守ってくれるというわけです。

タマシギがいつから田んぼで暮らすようになったのか、確かな事はわかりませんが、古くから田んぼのリズムと子育てのリズムを巧みに合わせて、子育てをしてきたのだろうと思うと、なぜかタマシギに寄せる愛着が強くなりました。

「田んぼのアイドル」撮影には細心の注意をお願い致します

タマシギはその姿の美しさと珍しさから、カメラマンに大人気。まさに、「田んぼのアイドル」です。しかし、困ったこともあります。カメラマンが、私有地である田んぼや農道に勝手に入ったり、神経質になっている繁殖期のタマシギに近づきすぎて驚かすなどの問題が起きているんだそうです。

タマシギの研究者で我孫子市鳥の博物館の小田谷学芸員は、撮影する場合は、「迷彩柄のブラインドの中から撮影するなど、タマシギにプレッシャーを与えない工夫をしてほしい」とのアドバイスをいただきました。絶滅の危機にあるタマシギを守るため、カメラマンの皆さんには、タマシギの暮らしを脅かさない節度ある撮影をお願いいたします。