オスが出産!?珍魚タツノオトシゴ

第432回「オスが出産!?珍魚タツノオトシゴ」

2015/10/11(日)午後7時30分~

日本の沿岸にすむタツノオトシゴ。およそ魚らしからぬ奇抜な体つきをしていますが、れっきとした魚の仲間です。大きさは全長7センチほど。主なすみかは岩場の海藻。天敵の肉食魚に見つからないよう、海藻に体を絡ませじっと身を潜めています。皮膚の形や色を変えて海藻に見事に擬態することから、見つけることが難しい生きものです。今回、日本海に面した鳥取県岩美町の浦富海岸で、タツノオトシゴの観察を続ける地元ダイビングガイドの協力のもと、4か月にわたる密着取材を行いました。

4月、繁殖期になると様子が一変。メスがオスを探して頻繁に移動するようになります。そして、カップル誕生の瞬間、オスとメスが向き合うようにくっつき、まるでハートマークのような形を作ります。実はこの時、メスからオスのおなかの袋へ卵が受け渡されています。この後、オスはおよそ1か月にわたって卵を守り育てます。研究から、オスの袋に哺乳類のメスがもつ胎盤のような機能が備わり、酸素や栄養分を卵に与えていると考えられています。まさに究極の育メンなのです。

6月上旬、ついにオスが出産します。生まれた赤ちゃんは、オトナと同じ姿で大きさは1センチほど。オスは、力を尽くし80匹ほどを海へ放ちます。ところが、出産を終えたばかりのオスに前回と同じメスが急接近。2度目のハートマーク!オスは息つく暇もなく再びメスの卵を育てることになります。一度カップルになったオスとメスのキズナは強いと考えられるのです。しかしさらに観察を続けると、同じメスが別のオスとの間に3度目のハートマーク!いったいどうなっているのでしょうか?数々のスクープ映像を交え、タツノオトシゴの、私たちの常識を越えた奇妙な恋に迫ります。

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取材こぼれ話

日本・鳥取の海 編

皆さんのおかげでスクープ連発!

辰(たつ)年になると年賀状によく描かれるタツノオトシゴ。皆さん、名前と姿は何となくイメージがつきますよね?でも、その暮らしぶりはご存じでしょうか?実は、過去のテレビ番組を調べても、野生での詳しい暮らしぶりはほとんど撮影されたことがありません。そこで協力をお願いしたのが、鳥取の海でダイビングガイドを続ける山崎英治さん。水中で偶然出会ったハートマークに自らの“ハート”を揺さぶられ、5年間も観察を続けてきました。今回は、この山崎さんのご協力のもと、NHK潜水撮影班が4人のカメラマンで密着!ハートマークと夜の出産の瞬間をモノにしたんです。ハートマークは、撮影のチャンスがわずか40秒足らず!!さらにオスの出産は、深夜の暗闇での潜水という厳しい条件でした。山崎さん、本当にありがとうございました!

そして、「とっとり賀露かにっこ館」、「かごしま水族館」、「鹿児島大学・水産学専攻の皆さん」ほかの皆さんにも、観察やビデオ分析、データ提供など、本当にいろいろとお世話になりました。この場を借りて深くお礼を申し上げます。

穴場のダイビングスポット!山陰海岸

山陰(日本海沿岸)でのダイビングは、沖縄などに比べて地味なイメージがありますが、実は、その魅力は無限大です。断崖から砂地まで海底地形の多様さ、夏から秋にかけての透明度の高さ!そしてユニークないきものたち!大物は少ないかもしれませんが、小さな生きものを観察するのにはピカイチのスポットが目白押しなんです。例えば、春によく見られる小さな珍魚「ダンゴウオ」は、北海道からわざわざ訪れるダイバーもいるほどです。今回の番組でも、タツノオトシゴだけにとどまらず、魅力的な生きものや海中の景観をご紹介しています。ぜひお楽しみください!