大西洋縦断!世界最大のウミガメを追え

第397回「大西洋縦断!世界最大のウミガメを追え」

2015/2/1(日)午後7時30分~

全長3メートル、体重1トンにもなるオサガメ。世界最大のカメですが、絶滅危惧種に指定されるほど数が少ない上に、外洋を回遊しているため暮らしぶりは謎に包まれています。

取材班が最初に向かったのは、オサガメの世界有数の繁殖場所であるカリブ海の島国、トリニダード・トバゴです。5月、夜の砂浜で待ち続けているとメスのオサガメが次々と上陸します。オサガメの最大の特徴は、カメなのに硬い甲羅を持たないことにあります。英語ではレザーバック(革の背中)と呼ばれ、背中は硬い皮膚がむき出しになっています。砂浜に産卵のための穴を掘ったメスは、一度に卵を80個ほど産むと海へ帰って行きます。

今回、産卵期間中のメスの海での暮らしを追跡すると、意外にも一日中ほぼ休みなく泳ぎ回っていました。実はオサガメの体は、表面が滑らかで紡すい形の体型をしているため水の抵抗が少なくなっています。この独特な体のおかげで少ないエネルギーで効率的に泳ぐことができ、オサガメはウミガメ界一の泳ぎの名手として知られているのです。

さらに、最新の研究によって産卵を終えたオサガメの主な行き先のひとつが明らかになってきました。なんと5千キロ近くも離れたカナダ沖の冷たい海です。変温動物であるカメは寒さが苦手なはずなのに、なぜわざわざ北の海を目指すのでしょうか。取材班は、オサガメの背中に最新のカメラを装着して、その謎の解明に挑みました。その結果、傘の直径が1メートルにもなる世界最大級のクラゲを大量に食べていたことが判明しました!オサガメは、カナダで大発生する巨大クラゲを狙って大海原を旅していたのです。

番組では、かわいい子ガメが天敵のコンドルに襲われるなど、数々の試練を乗り越え大海原へ旅立つドキュメントにも密着。知られざるオサガメの素顔に迫りました。

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取材こぼれ話

カリブ海からカナダ沖へ 編

カリブ海 夜の砂浜はつらい…

今回の主人公、オサガメはウミガメの仲間。産卵のために砂浜に上陸してくるところを待ち伏せすれば、撮影は簡単でしょ?・・・、と思ったら大間違い!一筋縄ではいきません。世界有数の産卵場所、トリニダード・トバゴの砂浜で何度泣いたことか…。

オサガメが上陸してくるのは夜。当然、あたりは真っ暗です。オサガメの目は暗闇に対して非常に敏感なため、照明を使うと警戒して逃げてしまいます。そこで主に、赤外線カメラを使って撮影しました。特殊な赤外線ライトを使いますが、人間の目にも全く見えません。ですので、オサガメにちゃんと照明があたっているのかは、ファインダーを見ているカメラマン以外には全く分からないのです。ですから、照明を担当するスタッフは、カメラマンの動きと狙いを予測しながら、右往左往の繰り返し。真っ暗闇のなか、何度砂に足を取られて転んだことでしょう。そんな試行錯誤を乗り越えて、撮影スタッフは抜群?のコンビネーションを築き上げ、撮影に成功したんです。

夜のオサガメ撮影での苦労は、照明だけにとどまりません。思ったよりも波や風が強く、マイクに雑音が入るため、案内役の研究者の声が録音しにくいのです。さらに、熱帯ならではの、巨大なバケツを一気にひっくり返すようなスコールも突然やってきます。足元を見れば、サンドフライと呼ばれる小さなブヨのような虫の大群が襲来。刺されると猛烈なかゆさが1か月以上も続きます。「カリブ海での撮影」と聞くと、リゾートなど楽園的なイメージが浮かびますが、やはり大自然は厳しい、と改めて実感しました。

こうした厳しい状況のなかでも、波打ち際に現れるオサガメの巨体を目の当たりにすると、まるで夢の世界にでもいるような気分になります。案内してくれた研究者が事前に話していた「まるで海から恐竜がよみがえってくるようだよ」という現場ならではの雰囲気もたっぷり感じ取ることができました。そんな臨場感を、ぜひとも番組で味わって頂けたらと思います。

カナダ沖 波がおさまるまで我慢・・・

取材を続けていくうちに、思わぬ情報が入りました。オサガメのなかには、カリブ海から5千キロ近くも北上し、カナダの冷たい海に集まるものがいると言うのです。そこで取材班もオサガメを追って、今度はカナダの大西洋岸にあるノバスコシア州に向かいました。大海原で暮らすオサガメに会える世界でも唯一の場所と言われています。ところが、ここで私たちを待ち受けていたのは「荒れ狂う海」。港で足止めされ、忍耐の日々が続きました。そしてようやく、波がおさまったわずかなチャンスを狙い、研究者とともに沖に出発。地元の漁船をチャーターしてオサガメを探しました。特製の見張り台から双眼鏡などで探すのですが、波が落ち着いたといえ、船は揺れっぱなし。船酔いしやすい私には、かなりツライ・・・。取材ができて大喜びだったんですが・・・。

そして、カナダでのロケの最大の見せ場であり、最大の難関だったのは、カメの背中への最新式カメラの装着です。事前の研究者の話では、1年でも数日しかない最上の穏やかな海況でないと不可能とのこと。ところが、半分諦め気味だった私たちに海の神様が味方をしてくれたのか、驚くほど静かな海況に1日だけめぐり会うことができたんです。そして幸運にも、オサガメの意外な狩りの様子を撮影することに成功。会心の大スクープとなりました。

私が最初にオサガメの取材を始めたのが2003年。そして2015年のことし、12年かかって、ようやく放送までたどりつきました。時間的にも距離的にも壮大なものとなった空前の追跡劇、オサガメの未知の素顔が満載です!ぜひともご覧下さい。