“強さ”vs“優しさ” アヌビスヒヒ 恋の駆け引き

第349回「“強さ”vs“優しさ” アヌビスヒヒ 恋の駆け引き」

2014/1/12(日)午後7時30分~

アフリカ、ケニア中央部に広がるライキピア高原。サバンナの真ん中にある岩の崖をすみかに、サルの仲間、アヌビスヒヒがくらしています。20匹から100匹以上の群れを作るアヌビスヒヒ。今回、およそ75匹の大所帯に密着しました。この群れには、おとなのオスが20匹ほどいます。全員、よその群れからやってきました。一方、おとなのメスも20匹ほど。メスは生まれた群れを一生離れません。

オスはメスの2倍近くの体重で、最大5センチにもなる鋭いキバを持っています。オスたちは巨体とキバを武器に、群れにいる他のオスとのケンカに明け暮れます。ケンカに勝って“強さ”で群れのナンバーワンになると、たくさんのメスからモテるんです。“強さ”ナンバーワンのオスは、いつもメスたちに囲まれて、毛づくろいを受けます。ヒヒの社会では、毛づくろいが愛情表現なんです。

一方、“強さ”でナンバーワンになれないオスたちは、驚きの作戦でメスの心を射止めていました。それは、1匹のメスにとことん尽くし“優しさ”をアピールする作戦です。意中のメスに近づいては、マメに毛づくろいをしたり、メスの子どもの世話を買って出たり・・・。こうすることで、多くのメスにはモテませんが、特定のメスのハートをガッチリとつかむことができるんです。

“強さ”VS“優しさ”。果たして真の成功者はどちらなのか?アヌビスヒヒが繰り広げる、人間顔負けの恋の駆け引きに迫りました。

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取材こぼれ話

ケニア・高原の断崖 編

緑あふれるライキピア高原

私たちがアヌビスヒヒの撮影で訪れたのは、アフリカのケニア中央部に広がるライキピア高原。訪れて驚いたのはゾウの数!毎日のように私たちの前に姿を現し、夜も宿舎のすぐそばを平然と通り過ぎます。地元の人に聞くと、この一帯に暮らすアフリカゾウの数は、ケニアでも第2位の多さだそうです。ライキピア高原は、他のサバンナとは少し違い、山がちで雨もたくさん降るため、緑にあふれています。だから、ゾウにとっても食べ物が多いのでしょう。ゾウの他にも、キリンやガゼル、中にはグレイビーシマウマやトピなど、ちょっと聞き慣れない名前の大型ほ乳類も数多く暮らす素晴らしい緑の王国でした。

アヌビスヒヒはしっぽで見分ける!?

そんな舞台で、恋の駆け引きを繰り広げるアヌビスヒヒ。今回、研究者の協力を得て、75匹の群れを追いかけました。撮影で苦労したのは、オスたちの個体識別です。相手は75匹。どこに誰がいて、どんな状況なのか?ちょっと目を離すとたちまち分からなくなります。しかも、オスたちはケンカ好き。顔にケガを負って、全然顔つきが変わってしまう、なんてこともあるんです。

そんな中、私たちの力になってくれたのは、地元のリサーチアシスタントの方々。彼らは、ほんの数秒でヒヒたちを見分けてしまいます。見分けるコツは、「しっぽ」だそうです。先が少し曲がっているもの、筆のようにまとまっているもの…。言われてみると、たしかに微妙な個体差があるんです。でも、しっぽだけで動き回るオスたちを見分けるのは、私たちにとってかなり高度な技術でした。なんとか75匹の群れと向き合えたのは、研究者を始め、リサーチアシスタントの方のおかげです。ご協力ありがとうございました!