実は最強!? カバの素顔

第314回「実は最強!? カバの素顔」

2013/4/21(日)午後7時30分~

野生の王国・アフリカで人々が最も恐れる動物は、ライオンでもゾウでもありません。なんとカバです。「水辺でのんびりと暮らす穏やかな草食動物」という私たちのイメージとは相反し、カバは、体長3メートルを超えるナイルワニをくわえて軽々と投げ飛ばすパワーを持つばかりか、3トンの巨体にも関わらず、草原を時速30キロで走るスピードをも合わせ持っています。その上、水中でもスピードは変わりません。まさに水陸両用のスーパーボディーの持ち主なのです。そんなカバの強さが最も発揮されるのが、オス同士の縄張り争い。縄張りを構える群れの主は、侵入してきたオスを発見すると、猛スピードで相手の元へ駆けつけ攻撃します。口を大きく開き、50センチもの長さの鋭い牙を相手に叩きつけるオス同士の激しい戦い。ときにはどちらかが命を落とすこともあります。縄張りを奪われれば子孫を残せないばかりか、すでにいる自分の子どもを殺されてしまうこともあります。だから群れの主は縄張りと家族を守るため、必死で戦うのです。群れの主が侵入者と見なすのは、オスのカバだけではありません。人間やボートも縄張りに入れば敵と見なされ、襲われてしまいます。実はアフリカで野生動物に人が襲われ死亡する事故のほとんどが、カバによるもの。だからアフリカの人々は「カバが最強」だと言うのです。番組では、ケニアとウガンダでカバの暮らしに密着。さらに、旅行者が偶然撮影した衝撃映像や、地元の人々の証言、そして飼育施設での「噛む力の測定実験」などを織り交ぜ、多角的にカバ最強説の真相に迫りました。

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取材こぼれ話

ケニア・ムジマの泉 編

観光地に住む「人間に慣れたカバ」のはずが…!?

今回の取材地の一つ、ケニア「ムジマの泉」は、世界で唯一、カバの野生での水中生活が観察可能な場所。世界的に有名な観光地になっています。そのため「ムジマのカバはとっても人間になついている」ということだったのですが、いざ訪れてみると、そこにいたのは、なぜかとっても警戒心が強いカバたちでした。実は、2008年から2009年にかけてケニアを襲った大干ばつで、泉の周辺ではカバの食料となる草が枯れ、泉に暮らすカバたちは全滅してしまいました。現在いるのは、元々は泉からずっと離れた川で暮らしていたカバたちで、干ばつの後、食料を求めさまよっているうちに泉にたどり着いたのです。幸いそのころには、周辺の草場が回復しつつあったため、何とか生き長らえています。

現在いるカバたちは、元々、人間が来ないところに暮らしていたため、人間の姿に慣れていません。50mくらいまでは普通に近づけるのですが、カバの「警戒ライン」があるのか、ある一線を越えると、「ブホッブホッ」と警戒の鳴き声とともに水中に潜り、たちまち視界から消えてしまうのです。カバの昼寝を木陰からこっそりと撮影していたとき、カメラマンの後ろからディレクターが少し顔を出しただけで、激しい鳴き声で威嚇されることがありました。私たちは、カバの近くで何日も、じっと動かずに「私たちは敵ではありませんよ」とアピールすることを続け、安心してもらうことでようやく近づいて撮影することができました。

カバも怖いがワニも怖い!

今回の撮影で私たちを最も困らせたのは、実はワニ。「ムジマの泉」には、カバの数の倍以上、20頭ものナイルワニがいます。世界最大級のは虫類で、大きなものは4m近くにもなります。泉のナイルワニは、普段は魚などを食べていますが、水を飲みに来たサルを水中に引きずりこんで食べてしまうこともあり、近づいて来たときはとても危険です。私たちが水際で撮影をしているときにも、一度、水中からこっそりワニが忍び寄っていたことがありました。その距離は、なんと1mほど。ワニは、スタッフの1人が急に動いたのに驚き、水中へと逃げていきましたが、その場にいたスタッフは本当にヒヤリとしました。・・・幸い人間は襲われませんでしたが、その後、ワニには、大切な撮影機材を壊されるなど、私たちにとって「最も怖い敵」であり続けたのでした。

失敗の連続!水中撮影

「カバの生き生きした姿を水中でとらえる!」と意気込んでムジマの泉を訪れた私たちですが、カバの警戒心の強さやワニによる妨害で予想以上に苦労しました。私たちはまず、模型ボートの底に水中カメラを取り付け、カバに近づこうとしましたが、ボートを見つけるやいなや、まだ10mはあろうかというところで、カバは一目散に逃げ出してしまいました・・・あえなく断念。そこで、水中リモコンカメラを、カバが好んで通る「カバ道」にこっそりと沈め、カバが近づくのを待つことにしました。しかし、今度は、カメラのあるところだけ上手に回り道して避けるなど、またも見事にかわされてしまったのです。そして、設置から1週間ほどたち、カバがようやく水中カメラに慣れて来たかな・・・というころ、今度はワニに、カメラのケーブルを「ガブリ!」とやられてしまいました。気がつけば、1か月の撮影期間のうち、およそ3週間を水中撮影の試行錯誤に費やしていました。焦りを募らせる日々でしたが、最終的に、水中カメラの前を駆け抜けていくカバの姿を撮影できたときは、それまでの苦労を忘れるぐらい感動しました。大きく目を見開いて水中を進むカバの姿は、迫力満点の映像です!