鼻から風船!? 珍獣ズキンアザラシ

第301回「鼻から風船!? 珍獣ズキンアザラシ」

2013/1/20(日)午後7時30分~

鼻の一部をふくらませて赤と黒の風船を繰り出すズキンアザラシ。全長は2.5メートル。おもに北極周辺の海に暮らしています。
風船を持つのはオス。メスをめぐる戦いのときに盛んにふくらませ、見せつけ合うのです。
たいていの場合、最初は鼻の外側の皮膚をふくらませた黒い風船から。自らの強さを相手に見せつけるためだと考えられています。
戦いがヒートアップすると出てくるのが赤い風船。これは左右の鼻の穴を隔てる柔らかい隔壁をふくらませて鼻の穴から飛び出させたものです。「オレは怒っているんだぞ〜!」という威嚇の意味を持つと考えられています。
なんとも奇妙なズキンアザラシの鼻ですが、この2つの風船のおかげで、オス同士はむやみに傷つけ合うことなく、勝敗を決することができるのです。

さらに、ズキンアザラシは、メスも他に類を見ないスゴ技を持っています。氷上で出産したメスは、哺乳類の中で最短となる、わずか4日間で授乳を終えます。そして、まだあどけない子供を残し、海へ旅だってしまうのです。
この短い時間での子育てを可能にしているのは、脂肪分60%、実に牛乳の15倍にもなる超高カロリーの母乳です。この母乳によって、子供の体重は4日で20キロから40キロへと2倍にも成長します。こうして身につけた皮下脂肪のおかげで、冷たい氷の海を生き延びることができるのです。
また、子供の体毛は、生まれたときすでに親と同じ泳ぎに適したものになっています。そのため、すぐに海に出ることが可能なのです。

冬、大量の流氷で覆いつくされるカナダ東海岸のセントローレンス湾を舞台に、船とヘリコプター、そして水中カメラを駆使して1か月におよぶ取材を敢行!これまで謎に包まれてきた珍獣ズキンアザラシの生態に迫りました。世界初のスクープ映像が満載です!

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取材こぼれ話

カナダ・東海岸 セントローレンス湾 編

大捜索! 流氷の珍獣

世にも奇妙な珍獣ズキンアザラシ。普段は北極周辺の海に暮らすため滅多にお目にかかれませんが、カナダ東海岸のセントローレンス湾では、毎年3月になると繁殖のため姿を現します。ところが“湾”といっても北海道の4倍もの広さ!しかもその時期は一面の流氷で埋め尽くされています。そこで私たちはヘリコプターと漁船を使ってアザラシを大捜索!1か月に渡り撮影に挑みました。
緊張するのは撮影のため流氷の上を歩いて移動するとき。近年は温暖化の影響のためか氷が薄い部分が多く、ちょっと気を緩めるとズボッと海に落ちてしまいます。もちろん、全身型のライフジャケットや潜水服を着用しているので、溺れることはないのですが・・・。
さらに、最も困難を極めたのは水中撮影です。氷に穴を掘り、氷点下1度の極寒の海に潜って出現を待つ潜水カメラマン。30分もすると潜水服の内側には汗が霜となって凍りついていました!気合いと根性で撮影に成功した世界初のスクープ映像、ぜひご覧ください。

流氷は命の“ゆりかご”

見渡す限り雪と氷ばかりの今回の取材で、唯一、心を癒やされたのは愛くるしい赤ちゃんです。寒さから目を保護するためなのですが、涙で潤んだ目で見つめられるとカメラのシャッターを押さずにはいられません。
さらに、セントローレンス湾では、今回の主役であるズキンアザラシだけでなく、美しい純白の毛皮に包まれたタテゴトアザラシの赤ちゃんも数多く見ることができます。凍てつく寒さに包まれる流氷の海は、多くの命を育む“ゆりかご”になっているんです。