敵はオオカミ! コヨーテの生き残り大作戦

第256回「敵はオオカミ! コヨーテの生き残り大作戦」

2012/1/15(日)午後7時30分~

原生の自然が減少し続ける北米大陸で今、勢力を拡大し続ける動物がいます。イヌの仲間のコヨーテです。同じイヌの仲間で最強・最大を誇るオオカミが数を減らす中、体長1mほどの小さなコヨーテがいったいなぜ繁栄できたのでしょうか?
その秘密の一つは狩りの技にあります。主食となる野ネズミなどの小型哺乳類を捕らえるとき、コヨーテは耳と目、それに俊敏さを武器にします。草むらに潜む獲物がたてるかすかな音で場所を突き止め、目で見て目標を確認。そして小型哺乳類を上回る素早い動きで捕らえるのです。ほぼ百発百中の腕前で、ときには宙を舞う鳥も獲物にするほど。
さらにコヨーテの狩りの技はこれにとどまりません。ときにはライバルのアナグマに狩りをさせ、その獲物をかすめ取るという頭脳プレーも見せます。
また、家族が団結して大きなシカを襲うという戦法も持っています。獲物に合わせ、多種多様な狩りの戦術を駆使するコヨーテは、まさに「技のデパート」。
さらに家族の団結力は天敵であるオオカミとの対決でも発揮されます。4〜6月に平均6匹の子どもを地中の巣穴に生むコヨーテ。天敵・オオカミから子どもたちを守るため、おとながおとりになるという捨て身の作戦を見せます。
今回の撮影では、家族が力を合わせて恐ろしいオオカミから獲物を奪いとる、貴重な場面にも遭遇しました。
知恵と団結を武器に繁栄を続ける、コヨーテの知られざる素顔を明らかにします。

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取材こぼれ話

アメリカ、イエローストーン国立公園とその周辺 編

空港での珍事

それはアメリカの入国審査官との珍妙なやり取りから始まった。撮影用のビザを提出すると、
「何を撮りに来たんだい?」
「コヨーテ・・・」
「コヨーテ!?」そしてあきれ顔で「あんなもの、わざわざ日本から撮りに来る価値があるのかい?」
実はコヨーテ、アメリカではかわいそうな扱いを受けている。兄弟のように姿かたちが似ているオオカミとは、イメージに雲泥の差があるからだ。
「かっこいいオオカミ」に対し、「みすぼらしいコヨーテ」と・・・。
オオカミは昔から物語の中では悪役。そういえば“男はオオカミ”と例える歌まであった。

その一方、かつて無敵の大横綱・千代の富士は、りりしい顔つきから“ウルフ”というニックネームで呼ばれていた。この悪者と英雄という、相反するイメージは、オオカミのパワフルさに対する人間の畏怖する気持ちの二様の現れのような気がする。

ところがコヨーテには、誰もそんな強いイメージをもっていない。大きさが分からなければ、うっかり見間違ってしまうほど良く似た二つの生きものの間に横たわる現地の価値観の落差、それを今回のロケでは再三感じることになる。

舞の海が小錦を倒した

4時半、まだ暗いイエローストーン国立公園のゲートを、何台もの車が次々と通過して行く。その車たちは、やがて1台の黄色い4駆を見つけると、その後に従い始めた。黄色い4駆の持ち主は、長年ここでオオカミの保護管理と調査を続けている専門レンジャーのR氏。“イエローストーンのスーパースター”と呼ばれる超有名人で、後に続くたくさんの車は、氏の“追っかけ”たちだ。彼らはR氏の後について行けば、確実にオオカミが見られることを知っているのだ。やがて追っかけたちの車は数十台にも膨れ上がる。

まるでアマノジャクのように、その車の一団とは別の方向に向かう1台の車がある。それがコヨーテを探す我々取材班の車だ。オオカミの出没している近くには、オオカミを天敵とするコヨーテがいる可能性は低い。
やがて、野ネズミを狩るコヨーテを発見。撮影開始。
ときどき我々の撮影する姿を見つけて、車が止まる。アメリカ人はみなフランクだ。動物ウォッチャー同士気軽に声をかけ、とっておきの情報を教え合う。
「何を撮ってるの?」
「コヨーテ!」
すると相手は落胆とあわれみの入り混じったような表情で、
「それより向こうに行けば、オオカミが撮れるよ」とか、
「いまこの先にグリズリーが出ていると聞いたんで行くところだけど、君らも行くと良いよ」と親切に教えてくれる。
「ありがとう。でも我々はコヨーテを撮っているんです」というと、信じられないという表情で、「グッドラック!」。
彼らにしてみれば、我々は上等なトロが目の前にあるのに、ツマばかり食べているヘンなやつに見えるのだろう。

そんな具合だから、欧米にはコヨーテをメインテーマにしたドキュメンタリー番組が驚くほど少ない。今回、オオカミの陰に隠れて陽の当らなかったコヨーテに焦点を絞ってみて、初めてこの動物のオオカミに勝るとも劣らない魅力が少しずつ見えてきた。

今回最大のスクープは、2匹のコヨーテが協力して、オオカミの食べ物を奪い取る場面。それを目の当たりにしたとき思い浮かべたのは、かつて体重100キロに満たない小兵の舞の海関が、小錦関の300キロ近い巨体に土をつけた時の相撲だった。当時、舞の海は“技のデパート”との異名をとったが、コヨーテも、まさにその名にふさわしいと、今回のロケを通じて確信したのだ。