密林の軽業師 クモザル

第246回「密林の軽業師 クモザル」

2011/10/2(日)午後7時30分~

中米コスタリカに、密林を跳ぶように駆け抜けるサルがいます。長い手足を持つクモザルです。体操選手のような身のこなしで枝から枝へと最短コースを一直線に進み、森を高速移動、その速さは世界のサルの中でもトップクラスです。速さを支えているのが「腕わたり」と呼ばれる移動術です。長い腕で前方の枝を掴むと、振り子の要領で体を大きく前に出しながらぐんぐん進みます。このスムーズな腕わたりを支えているのが、特別な手です。親指がないため、4本の指をフックのように枝に素早く引っかけることが出来るのです。また、手足より長いしっぽにも秘密があります。枝を掴んだり命綱にしたりと、自由自在に操り、第5の手足の役割を果たすのです。卓越した身体能力を生かし、森でいち早く食べ物を見つけるクモザル。けれども親指がないため物をつまむのが苦手で、大事な果実をぼろぼろと落としてしまうという不器用な一面もあります。これが、地上で暮らすイグアナやシカなど、多くの森の命を助けることにつながっています。また、自分の食事場所に別のサルが来て果実を食べても追い払わないどころか、そのサルに自分の毛繕いをしてもらうなど、奇妙な関係を見せたりもします。驚異的な移動術で軽業師のように密林を躍動するクモザル、その知られざる暮らしに迫ります。

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取材こぼれ話

コスタリカ・熱帯乾燥林 編

手強い森でサルが駆ける!

今回の舞台は、コスタリカの熱帯乾燥林。「熱帯雨林」はよく聞きますが、熱帯乾燥林という聞き慣れない場所に、私、初めて行ってきました。なんでも、乾季には雨がほとんど降らず、乾燥地で目にするサボテンやアカシアの木が混在する不思議な森だと言います。

暖かくて乾燥しているんなら、結構快適かも・・・なんて期待していましたが、訪れたのは雨季。どうやら、雨季に入ると一気に雨が降り、1週間ほどでジャングルのようなうっそうとした森になってしまうようです。私たちが訪ねた頃には、すでに葉っぱが森を覆い尽くし、視界が悪い上に、油断しているとサボテンやアカシアのトゲがちくちくと体に刺さり、歩くのも大変な森になっていました。

クモザルは、そんな森の頂上付近に暮らしています。しかも高速移動が得意なので、いざ見つけても、あっという間に森の奥に駆け抜けて行ってしまいます。撮影隊は上を見上げてサルを追いながら、移動中の危険にも気を使うというハードな毎日を過ごしました。

神出鬼没の軽業師を追え!

雨季に撮影に行った理由は、クモザルの大好物である木の実がたくさんなって、クモザルがどこにいるか見当がつけやすくなると聞いたから。とはいえ、木の実が熟れる場所は日ごとに変わり、クモザルのいる場所も毎日変わっていきます。

私たちだけでは途方に暮れる状況でしたが、そこで救世主となったのが、この森で10年近くクモザルの研究をしている、フィリッポ博士と、アシスタントのエルビンさんでした。たとえサルを見失っても、多分このあたりにいるという予想を立て、私たちの先導役となっていただけました。彼らは、森に住むクモザル1匹1匹に名前を付け、性格や親子関係も全て把握していました。

実は、今年は雨期に入っても雨が少ない時期があり、木の実のなりがいつもの年より悪く、追跡は困難を極めました。けれども、クモザル研究チームと共に粘り強い追跡を続けたおかげで、クモザルの知られざる暮らしに迫ることができました。こうした観察が困難な動物を、長期に渡って研究されている方々には、本当に頭が下がります。本当にありがとうございました!