まるでスズムシ!羽で鳴く鳥

第238回「まるでスズムシ!羽で鳴く鳥」

2011/7/10(日)午後7時30分~

南米エクアドルのアンデス山脈。霧が育んだジャングルに、『羽で鳴く鳥』がすむといいます。森の奥深くへ分け入ると、「ピー、ピー」と機械のような音が聞こえてきます。音を出していたのは体長8センチほどの小さな鳥。世界で唯一、虫のように羽で鳴くキガタヒメマイコドリです。音を出せるのはオスだけ。メスを誘い求愛するために羽を鳴らします。その様子をハイスピードカメラで撮影すると、1秒にして100回以上というスピードで羽を震わせていることが判明しました。鳥の羽の動きとしては世界最速です。さらに詳しく調べると、羽の一部分にスズムシが音を出すのと同じような仕組みがあることも明らかになってきました。羽の音でメスにアピールするオスたち。その求愛は奥が深く、相手をじらしたり、音に華麗なアクションを組み合わせたりします。さまざまなテクニックを駆使しなければ、メスを振り向かせることは出来ないのです。あの手この手でメスを呼ぼうと大奮闘するオスたちに、番組は密着します。さらに今回、若いオスの姿を世界で初めてとらえることにも成功。若いオスは、もてるオスのワザを目で見て盗みながら、何年にもわたって音を出す訓練を積み重ねていきます。飛ぶための翼を使い、音を奏でるまでに進化したキガタヒメマイコドリ。情熱の恋物語に迫ります。

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取材こぼれ話

エクアドル・ジャングル 編

南米アンデス マイコドリに翻弄された日々

今回の舞台は、アンデス山脈の中腹にある、うっそうとしたジャングル。この中で、スズメより小さいキガタヒメマイコドリを見つけるのは至難の業だと覚悟していました。ところが探してみると、意外なほど簡単。この鳥が羽をならして出す「ピー」という音は、森の中でもひときわ目立つからです。

でも、本当の試練はこのあとでした。この鳥、撮影していると、たった数秒で、カメラの前から消えてしまうんです。実はエクアドルでは、マイコドリは「ピョンピョン飛び回る鳥」という名前がついているほど、せわしなく枝を飛び移る鳥。飛び移った枝を見つけてもすぐに次の枝へ・・・。とにかく翻弄され続けました。ようやくカメラの前で求愛ダンスを見せてくれたのは、なんとロケ終了の2日前でした。

そんな中、奇妙な発見がありました。ある日、森の奥でオスを見つけ、撮影を始めたところ、カメラマンが「何か変だ!」と言い出したのです。映像を見てみると、真っ赤なはずの頭のてっぺんが、なんと真っ黄色。研究者もガイドも見たことがないと言います。色が変わる前の若いオスなのか?それとも突然変異か?違う鳥との雑種かもしれない!色々な意見が飛び交いました。

私たちは頭の黄色いマイコドリを「キイロくん」と呼び、このナゾを解明しよう!と意気込んでいました。ところがわずか2日後、キイロくんは姿を消してしまいました。彼が存在したという唯一の証拠は、私たちが撮った映像だけ。キイロくんのことは番組では紹介していませんが、今後の研究で新たな事実が分かることを期待しています。

日本でも進行中!羽の音の謎に迫れ

キガタヒメマイコドリの羽の音のメカニズムは、6年ほど前、アメリカの教授によって解明され始めたばかりです。でも、音を出すとき羽の軸にかかる力がどのくらいであるとか、森に響く音の大きさがどのくらいかなど、まだ分からないことがたくさんあります。

そこでいま日本でも、東京工業大学・岩附信行教授(機械物理工学)の研究室と山階鳥類研究所が合同で、この羽の謎に迫っています。山階鳥類研究所に保存されているキガタヒメマイコドリの羽の標本を、国立科学博物館にあるCTスキャンで立体解析。そのデータから、音が出る時、羽の軸がどのように動くのか、アニメーションを作成しました。さらに立体模型も作成し、どのように音が出るのか実験も行うとのことです。

羽で音を鳴らす謎が解明され、そのメカニズムが将来、私たちの暮らしの意外な分野に応用される日が来るかもしれません!