子育ては父の仕事!アマゾンの“育メン”ザル

第227回「子育ては父の仕事!アマゾンの“育メン”ザル」

2011/4/24(日)午後7時30分~

アマゾンのサル、ティティは、父親が授乳以外の一切の育児を受け持ちます。今はやりの“育メン”です。赤ちゃんを背負って一日中歩き回るのはもちろん、毛繕いやお尻の清掃から、天敵への防衛まで全てやります。そして母親が十分お乳が出るよう、ごちそうは、最優先で母親へ。こうした父親の育児は、出産に立ち会うことで、赤ちゃん誕生とともに始まります。ティティの父親の様々な“育メン”ぶりを追うと共に、世界初の出産映像も紹介します。

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取材こぼれ話

アマゾン 編

ベールを脱いだ“育メン”ザル

今回の主人公ティティは、変わり者の多いアマゾンのサルの中でも、とびきりの変わり者です。オスがメスの子育てを手伝うサルは他にもわずかながらいますが、ティティほど徹底してオスが子育てをするサルはほとんどいません。しかし、その“育メン”ぶりも、ごく最近分かってきたもので、ティティは長い間、未知のサルだったのです。私たちはこれまで数々のアマゾンのサルたちを取材してきましたが、ティティは最後に残されたものの一つでした。

取材のきっかけは、ある映像です。昨年(2010年)9月京都で開かれた国際霊長類学会で、アメリカのバトラー大学のアンナ・デリュイカー博士は、自ら撮影した驚く様な映像を、世界中から集まったサル学者たちの前で初めて公開したのです。そこには、ティティの父親が母親の出産に終始立ち会い、絶えず気を配りながら出産を手助けする様子が克明にとらえられていました。この映像によって、ティティの父親の“育メン”ぶりが、早くも出産の瞬間から始まっていることが初めて分かったのです。

これを撮影したデリュイカー博士は、謎の多いティティの長期観察に成功し、その“育メン”ぶりを次々と明らかにしていった研究者です。ティティの子育てを追うため、私たち取材班は、さっそく博士の案内で、雨季のアマゾンに飛びました。

ヤブに阻まれた50日

取材は11月上旬から12月下旬までの、約50日間にわたって行われました。現地に着いてまず我々を悩ませたのは、壁の様に立ち塞がる密生したヤブでした。ティティは好んでそういうヤブに住むそうですが、そのためすぐ近くに彼らがいても、ツルや葉がじゃまをして良く見えません。体が小さいティティは、前にたった1枚の葉があっても、全身を隠してしまうことがあるのです。「声はすれども姿は見えず」。ピンポイントで垣間見える場所をやっと探り当て、カメラの位置を微妙に調節して、いざ撮影という段になると、どこかへ行ってしまうということの繰り返しです。とにかく、数少ないチャンスを積み重ね、撮影を進めるほかありません。また、地上からはほとんど隠れて見えない木の高い所での生態は、イントレを組んで20mほどのタワーをつくり、そこから撮ることにしました。

そんな調子で試行錯誤しながら撮影を進めるうちに、ティティたちも我々が敵ではないことが分かってきたのか、少しずつ近くに寄ることを許してくれるようになりました。しかし、それで順調に撮影を進められるようになったかというと、そうでもありません。さらに我々を悩ませたのが、蚊の大群です。日本にも“藪蚊”という言葉がありますが、雨季のアマゾンのヤブに発生する蚊の数は半端ではありません。頭の上に蚊のベールができるほど。虫除けスプレーも気休め程度にしか効きません。にもかかわらず、カメラの操作中は、手に蚊がとまっても、追い払うわけにはいかず、いつも手の甲は刺された痕でボコボコです。撮影中は集中しているので余り痒さも感じませんが、撮影が終わると猛烈な痒みに襲われ、かゆみ止めを塗りたくる結果になります。それにしてもティティだって同じ様に刺されているでしょうに、そんなところに好んで住むなんて、やっぱり相当な変わり者なんですね。

そうした様々な苦労の甲斐あって、ティティの徹底した“育メン”ぶりの数々を、初めてカメラに収めることができました。ティティこそ、父の鑑。“育メン”の大先輩の、至れり尽くせりの子育てぶりを、たっぷりご覧ください。