癒(い)やし系カピバラ 走る!泳ぐ!

第176回「癒(い)やし系カピバラ 走る!泳ぐ!」

2010/1/3(日)午後7時30分~

愛きょうたっぷりの顔。短い足に、ふっくらとした全身を覆う茶色い剛毛。「癒やし系」として、日本で人気急上昇中の草食動物、カピバラです。体長1.3m、体重60キロ。世界最大のネズミの仲間としても知られています。
でもこれまでその大自然の中での暮らしぶりは、ほとんど紹介されてきませんでした。今回取材班は野生のカピバラの群れに密着、そこで繰り広げられる知られざるドラマを追いました。
舞台は南米・ブラジルのパンタナール。本州ほどもある広大な湿地帯は、ジャガーやピューマも生息する野生動物の宝庫です。
この水辺を20匹もの群れで大行進するのがカピバラ。キーワードは「のんびり」「ゆったり」。一日中草をはんだり、眠ったり。中でも小鳥に体を掃除してもらうためゴロリと横になる姿は、まさに癒やし系そのものです。子育ても愛情いっぱい。メスは自分の赤ちゃん以外にもお乳を与えて、群れ全体で子育てしています。
しかしひとたび群れの一員が大声で鳴くと、全員が猛然と水の中へとダッシュ。のんびり者の姿からは想像もつかない瞬発力を発揮します。
一斉に水の中に飛び込むと、脇目もふらずにグングン泳ぎ始めます。実はカピバラは泳ぎが大得意。4つの足の指の間にカエルのような水かきを備えていて、グングンスピードを上げることができるのです。しかも呼吸を止めて水中へ、何と5分間も潜り続ける能力があります。
さらに陸上では、恐ろしいワニの大群を前にしても、全くものおじしません。
大自然を生き抜くカピバラ。癒やし系の姿に秘めたもう一つの知られざる顔に迫ります。

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取材こぼれ話

ブラジル・パンタナール 編

大人気!癒やし系カピバラ

とある番組で、日本中の動物園マニアの皆さんが集まって「一番好きな動物」を答えるコーナーがありました。ゾウやライオン、キリンなど動物園のいわゆる「常連さん」を抑えてずいぶん目立っていた回答が、今回のカピバラ。マニアの皆さんのカピバラの楽しみ方は、「触る」「エサをやる」なんていうのは当たり前、中には「カピバラと一緒に寝ころんでお昼寝」なんて人もいて、ビックリでした。 カピバラはキャラクターのヒットもあり、ここ数年若い人たちを中心にジワジワと人気を高めている動物です。動物園でカピバラを見に来ていた小学生の女の子は「キャラクターがきっかけでカピバラが好きになった」と話していました。長崎の動物園に、関西から「Myイス」を持ってやって来て、2泊3日ずっとカピバラを眺め続ける、なんて方にも出会いました。カピバラを私的に紹介するホームページやブログもいくつかあり、それぞれ内容がかなりの充実ぶりで驚かされます。いまやカピバラは、動物好きの皆さんの心をつかんで離さない、とってもアツい動物なんです。 ところが、その野生での姿はどうなの? ってなると、日本ではまだほとんど紹介されていません。いったいどんな暮らしをしているのでしょうか? その姿を追って、私たちは南米・ブラジルのパンタナールへと旅立ったのでした。

のんびりカピバラに片思い

念願の野生のカピバラの群れに出会った私たち。昼も夜もず〜っと群れに密着して撮影を続けました。カピバラは毎日数カ所の食事場所を転々と移動しながら、草を食べたり休んだりを繰り返しています。野生でもやっぱり「のんびり」「ゆったり」。カワイイからつい見とれちゃうんですが、ドラマチックな出来事はなかなか起きません。 いつ何が起きても良いように、常にカメラを構え続けるスタッフ。でも真上から降りそそぐ日差しはきつく、最高気温は40度近く。数日もすると日焼けで真っ黒ですが、当のカピバラは日差しを避けて、日陰や水の中でボーっとしているだけです。 でも突然思い出したかのように移動し始めたり、仲間とじゃれ合ったり。時には「放浪オス」と呼ばれる独り身のオスがリーダーの座を狙いにやって来てケンカが始まるので、気を抜くこともできません。 実は今回の撮影で最も大変だったのは「カピバラの次の行動をよむこと」でした。動物って、しばらく観察・撮影をし続けていると「次こういう事をするだろうな」とか「こんな展開になるだろうな」っていうのが、何となく予想できるようになるのが常です。ところがカピバラは撮影終盤まで、次の行動を私たちに予想させてくれませんでした。 「ケンカするかな?」って気を張って撮影していても何も起こらなかったり、カメラを構えていない瞬間、突然猛スピードで走り出して向こうの茂みに隠れていた放浪オスを追い払ったり…。 でもこれもまた、魅力のひとつなんですよね。思い通りにいかないほど、私たちも「次は撮るぞ!」って、気持ちが高まりました。これはまさに、カピバラたちへの片思い! 果たしてスタッフの思いは通じたのでしょうか?

水中撮影大作戦

カピバラはのんびり者でありながら、意外なまでに水泳が得意。短い足、大きな体。体型だけみると水泳にはちょっと不向きにも思われますが、耳と目と鼻だけを出して水面をスムーズに泳ぎ進む様子は、まるで潜水艦のようです。そこで水中撮影! 水中ではいったいどんな動きをしているのでしょうか?私たちは3種類の特製カメラを準備して乗り込みました。 ●特製カメラ(1)「いかだカメラ」 カピバラを驚かさないよう、特製の小型いかだにカメラを載せて、イカダを棒で操ろうという作戦です。準備万端、泳ぎ出そうとしているカピバラの脇にそっと近づけて待機しましたが…。 ●特製カメラ(2)「水陸同時カメラ」 水面の上と下から2台のカメラで同時に撮影するための特製カメラです。泳ぐカピバラにそっとボートで近づいて、撮影スタート。いい感じでカピバラはボートと併走して泳いでくれました。ところが…水中の映像を確認すると、真っ茶色! 水の濁りがひどくて、透明度が50cmを切るほどだったんです。 実はパンタナールでは、わき水さえも地中の成分を含んでしまって茶色く濁っています。泊まっていた宿でも、シャワーの水は茶色。真っ白なシャツも、何度か洗濯するうちに茶色く変色してしまうほどでした。 ●特製カメラ(3)「棒の先カメラ」 もう後がないスタッフ。最後に取り出したのは、棒の先に取り付ける形の小型水中カメラです。これに魚眼レンズを装着。レンズの特性を生かし30cmくらいまで近づいて、全身の動きを撮ろうという作戦です。 ボートが徐々に近づき、泳ぐカピバラと併走。そのすぐ脇にカメラを没すると…見えました、カピバラの足の動きが! ついに撮影に成功した泳ぐカピバラの水中映像。番組ではカピバラの知られざる水泳能力の秘密を、じっくりご覧頂けます。お楽しみに!

おまけ…お楽しみのお食事

ブラジルでの食事は基本的にビュッフェスタイル。好きなものを好きなだけお皿に盛っていただきます。ついつい取りすぎてしまい、ディレクターは1か月あまりの滞在中に、何と3キロも太ってしまいました(汗)。 料理の味付けは、かなり日本人好み。日本から移民された方々がブラジルに広めたしょう油も、調味料としてはとてもポピュラーなんです。 パンタナールでは肉牛が沢山飼われていて、牧歌的な風景を作っているのですが、さすが、新鮮なお肉は美味しい! 何枚でもパクパク食べられちゃいます。 そして魚といえば、やっぱりピラニア。カピバラの暮らす水中にもたくさんいるので、実は撮影では水中に入らないよう、慎重〜におこなっていました。釣り糸を垂らせば、結構簡単に釣れちゃうそうですよ。姿焼きやフライはもちろん、温かいスープでもいただきました。意外とクセはなく、おいしい白身魚でした。 そして寝る前の「反省会」で飲んでいたのは、「カイピリーニャ」と呼ばれるカクテル。サトウキビが原料でラム酒によく似た「カシャーサ」と呼ばれるお酒に、たっぷりのライムと砂糖を入れた、シンプルだけど強いお酒です。 おいしいご飯をいただき、カシャーサを飲んで、翌朝も早くから始まる撮影のためコテンと眠る。満天の星空とともに過ごしたパンタナールの夜…「人はこうあるべきだよな〜」と、ふと思ってしまいました。