魚を釣る魚 カエルアンコウ

第173回「魚を釣る魚 カエルアンコウ」

2009/11/29(日)午後7時30分~

魚なのに魚を釣るという不思議な魚がいます。
全長10センチほどのアンコウの仲間、カエルアンコウです。カエルアンコウがよく見られる静岡県大瀬崎と宮崎県延岡市の海でその奇妙な暮らしぶりを追いました。
カエルアンコウの最大の特徴は頭から生えた釣りざおのような棒です。先端にはエスカと呼ばれる疑似餌までついているんです。背びれが変化してできたという疑似餌は、何本かの柔らかい房のような形をしていて、多くの魚が好物にしているゴカイの仲間によく似ています。更に、このエスカは自由自在に動かすことができて、見た目はまさに海底をうごめくゴカイそのものです。クネクネと動くエスカに興味津々の小魚たち。吸い寄せられるように近付いた一匹がエスカの先を口に含んだ途端、目にも留まらない勢いでカエルアンコウが食らいつきます!魚が魚を釣るという、驚異の瞬間です。更に驚くべきはそのスピード。魚を口に入れるのにかかる時間は、0.007秒という記録があり、カエルアンコウの仲間の狩は魚類最速であるという研究結果もあるほどなんです。閉じた口を12倍の容積に一気に広げ、獲物を掃除機のように吸引してしまいます。釣りの技の一部始終を、超スローモーション撮影なども交えて徹底解析!
釣師としての修行は小さな子供の頃から始まります。獲物を求めて歩き回るうちに他の魚の縄張りに入ってしまったり、夢中になってエスカを振るあまり最大の天敵の肉食魚をおびき寄せてしまったり、様々な試練にさらされながらもたくましく成長していくカエルアンコウの姿を追いました。

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取材こぼれ話

静岡県大瀬崎と宮崎県延岡市の海 編

魚の世界の釣り師、カエルアンコウ

今回は「魚が魚を釣る」という話です。主人公はカエルアンコウという魚。日本では本州以南の海で見られ、ダイバーの皆さんの間では、最も人気のある魚の一つなんだそうです。 カエルアンコウは、その名の通りアンコウの仲間です。アンコウと聞いてまず連想するのは、おでこから出ている「ちょうちん」ではないでしょうか?アンコウの仲間の特徴である「ちょうちん」は、エサである小魚をおびき寄せるためにあります。チョウチンアンコウの仲間の場合、ちょうちんの部分が発光することで小魚をおびきよせたりしますが、カエルアンコウにも獲物をおびき寄せるための器官があります。 頭からは、釣りざおのような細い棒が生え、その先には精巧な疑似餌が付いています。形は色々な魚の大好物であるゴカイやイソメなどに形がよく似ています。実は背びれが変化してできたものなんだそうです。カエルアンコウはこの疑似餌をクネクネと自在に動かすことができます。その様は生きたゴカイの仲間そっくり。お腹をすかせた小魚が近付いてきたところを…パクリ!! カエルアンコウの驚異の釣りの全貌は、番組で詳しくお伝えします。

魚類最速のハンティング!!

カエルアンコウが獲物に食らいつく速さは、魚の世界で最も速いと言われています。口を開けてから魚が口の中に入るまでのスピードは、研究者が計測した記録では、なんと0.007秒、1000分の7秒です。私たちはその驚異の狩りを、ハイスピードカメラで撮影することに挑戦しました。 その結果は、ビックリ!! カエルアンコウが口を開けた瞬間、まるで掃除機で吸うように、小魚が吸い込まれていきます。凄まじい迫力に、スタッフ一同、声を失いました…

「歩く」魚

カエルアンコウのもう一つの特徴が、魚なのに「歩く」ということ。長く発達した胸ビレと腹ビレを交互に前に出し、海の底を、まるで歩くように進んでいきます。こんな変な動き方をする魚は他にいません。とってもユーモラスな動きで、見ているだけで心が和む、癒しキャラなんです。ちなみに、泳ぐのはあまり得意ではありません。ホント、変な魚なんです…

撮りたい!でもいない!

今回の撮影で最も苦労したこと、それは、カエルアンコウがなかなか見つからなかったことです。撮影は4月、カエルアンコウがよく見られることで知られる、静岡県大瀬崎の海で始まりました。確かに、いることはいるのですが、まだ魚を食べることができない小さいサイズのものばかり。たまに大きなものを見つけても、すぐにいなくなってしまい、一番撮影したい「魚が魚を釣る」というシーンをなかなか撮ることができません。専門家によると、原因は水温。カエルアンコウは、寒い時期は深い海で体力を温存して過ごし、水温が上がると浅瀬にやってきて活発に小魚を食べる、というものが多いそうなんです。日照時間が少なく、雨が多かった今年は水温が例年に比べ低い状態が続いた為、カエルアンコウが浅瀬にやってこない、という訳。異常気象は海の生きものにも大きな影響を与えていました。 撮影開始から4ヶ月以上、それでも釣りのシーンは撮れません。8月、悩むスタッフに朗報が入りました。宮崎県延岡市の海でカエルアンコウが釣りをしているシーンが目撃されたというのです。急遽宮崎県に飛んだロケ隊。ようやく、釣りのシーンの撮影に成功したのでした。良かった、良かった…