珍虫ツノゼミ 百変化!

第168回「珍虫ツノゼミ 百変化!」

2009/10/25(日)午後7時30分~

「ツノゼミ」と呼ばれる奇妙な昆虫のグループがいます。体長が1センチ前後のセミに近い虫で、世界に3千種類以上が知られています。ツノゼミは体に「ツノ」があり、種によってその形を変化させ、森羅万象様々なものにモノマネします。その一種バラノトゲツノゼミは、三角帽子のような姿をしています。1匹だけだと目立ちますが、それが集団で集まることにより「トゲトゲの枝」を真似ていると言われます。アリツノゼミは、黒いツノがアリそっくりの形です。ツノ以外の部分が、緑色をしていて植物に溶け込むことで、アリが立ち上がっているように見えるのです。これは「アリの攻撃姿勢」を表現していると考えられています。マネるのは生きものだけではありません。ムシノフンツノゼミは、その名の通り、黒くまん丸の体で芋虫の糞をマネています。その他にも、細く弓状に曲がった枯葉や水滴、ちょこちょこ枝の上を走り回るハチなど幅広いモノマネによって天敵の目を欺くのです。しかし、そんなモノマネを見破る強敵もいます。嗅覚の鋭いカメムシやハチです。バラノトゲツノゼミにハチが近づいてきました。絶体絶命のピンチ。ところがツノゼミはある驚きの技で、一瞬にしてピンチを脱します。その技をハイスピードカメラが克明に捉えました。世界でもツノゼミが最も多く生息する場所の一つ、中米コスタリカで、知られざる珍虫ツノゼミのモノマネワールドに迫ります。

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取材こぼれ話

コスタリカ 編

ツノゼミって何? 私とツノゼミの出会い

「ツノゼミ」という虫を知っている方は、かなりの虫ツウですね。私は子どもの頃いつも虫採り網を握りしめていた昆虫少年でしたが、ツノゼミのことは知りませんでした。ツノゼミとの最初の出会いは、虫の研究を始めた大学時代。ツノゼミの標本を集めている先輩がいて、初めて標本を見せてもらったんです。「セミ」と付く名前なのに、なんでこんなに変な形なのか。驚いたのが第一印象でした。 「ツノゼミの番組を作りたい」そう思ったきっかけは、最近、ツノゼミが載っている図鑑を見た事でした。ツノゼミたちの変な形は、実は「モノマネ」の産物だったんです。標本だけではわからなかった精巧なモノマネ術に改めて感動した私は、この珍虫たちを是非ダーウィンが来た!で紹介したいと、取材を始めました。

いざコスタリカへ 予想以上に小さなツノゼミ

取材を進めると、変わった形のツノゼミが中米のコスタリカで多く見られることが分かりました。さらに心強いことに現地で10年以上活躍している日本人の昆虫研究者・西田賢司さんが協力してくれることになったんです。現地が雨季になってツノゼミの活動が活発になる5月、私たちはコスタリカに向かいました。 コスタリカでツノゼミを見てまず驚いたのは、その小ささでした。ほとんどの種類が小指の先ほどもないんです。小さな虫をどうやって迫力たっぷりに撮るか。そこで活躍したのが「内視鏡レンズ」です。胃カメラの管を硬くしたようなレンズで、まるで、小さな虫の目から見たように、ツノゼミたちが大きく映るんです。内視鏡レンズがとらえた“大きな”ツノゼミたちの見事なモノマネ術、ぜひ番組でお楽しみ下さい。

本当に虫? 親子のきずなに感動

ツノゼミたちの見事なモノマネ術とともに私が感動したのが、まるで人間のようなツノゼミの親子の深いきずなでした。植物のトゲを真似るバラノトゲツノゼミという種類の母親は、卵を木の枝に産み付けるとそこを離れず、子どもが成虫になるまで守り続けます。そして自分を襲うかも知れない天敵がやって来ても決して逃げることなく必死で子どもを守るために戦うんです。それは、虫にも「心」が宿っているのではないかと思える感動的な光景でした。 巧みなモノマネや決死の子育て。小さな虫たちのたくましい生き様をご覧いただき、まさに「一寸の虫にも五分の魂」があることを実感していただきたいと思います。