知床 急流に潜る鳥

第164回「知床 急流に潜る鳥」

2009/9/27(日)午後7時30分~

野生動物が集う世界自然遺産・知床。急な地形の知床半島には、源流部から海まで急流が続く川が100本近く流れています。この急流を住みかに暮らしている鳥がカワガラス。大人の手のひらほどと小さく、一見すると普通の鳥の姿をしています。しかしカワガラスは急流を潜って川底の石の裏に隠れる水生昆虫を狩りする渓流のダイバーです。速い流れをものともせず、水中を羽ばたくように潜り、川底の大きな石もひっくり返すことができるのです。知床の秋、川にサケやマスが大群となって帰ってくると、カワガラスは得意の潜水術でなんと川底に産卵されたイクラを食べて秋の恵みを享受しています。1年をとおして川に暮らすカワガラスにとって、知床の冬は厳しいもの。本来の住みかを離れ、波が押し寄せる海岸近い河口にまで下りて長い冬を越すのだ。春、ようやく普段の川に戻ったカワガラスは、滝に飛び込む驚きの行動を見せる。実は、キタキツネなどの天敵から卵やヒナを守るために滝の裏に巣を作っていたのだ。時には激しい滝の流れに押し返されながらもカワガラスはヒナの安全のために滝への必死のダイビングを続けて子育てをするのです。ヒグマやエゾシカなどが集まる世界自然遺産・知床を舞台に、とことん川にこだわって生きる小さな鳥、カワガラスの1年を紹介します。

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取材こぼれ話

北海道・知床半島の渓流 編

世界自然遺産・知床と言えば・・・

「世界自然遺産・知床」と聞いただけで、どんな動物を思い浮かべますか?ヒグマ、エゾシカ、キタキツネはもちろん、鳥ですとオジロワシにオオワシ、それにシマフクロウもいます。その中で今回の主人公はカワガラス!?知床なのに、なぜカワガラス?という疑問をお持ちの方もいると思います。その疑問の答えは番組をご覧になって感じていただければうれしいです。 そして今回のもう1つの主人公は知床の「川」です。知床といえば、美しい知床五湖、雄壮な知床連山、冬には流氷といった風景があります。川が注目されるのはサケやマスの遡上(そじょう)の時期でしょうか。小さな川にもアイヌの呼び名が1つ1つ付けられた知床の川、その四季の移ろいもカワガラスと一緒にぜひご覧ください。

親子で挑んだ撮影

今回の撮影は第45回「知床 ハンターたちの攻防戦」に引き続いて知床在住の動物カメラマン石井英二さん。これまで知床を舞台にヒグマや、オジロワシを撮影してきたベテランカメラマンです。しかし、渓流釣りや山歩きをされる方でカワガラスを実際に見たことがある方はご存じと思いますが、この鳥、実に素早く川を飛んでいきます。ベテランの石井さんがいざ撮影しようとしても、一度飛び立ったカワガラスは遙か彼方へ・・・。 そこで!今回の撮影では石井さんの息子さんが実に様々な特殊撮影を担当してくれました。水中の撮影から、ハイスピードカメラの撮影まで、さらに巣の探索まで息子さんは大活躍。二人の娘を持つディレクター(男性)は親子で一緒に撮影ができる石井さんを背後からうらやましく思っていました。

海の大型動物にも挑む

息子さんが挑んだ場所は陸上だけではありません。羅臼町の根室海峡に訪れるクジラやイルカ、さらにシャチといった大型の海洋ほ乳類にも挑んでいます。 羅臼町は日本屈指のホエールウォッチの名所です。遠くから研究者が訪れるほどの最高の観察場所です。クジラたちは豊かな海の魚を目当てにやってくるのですが、海が豊かということは豊富なプランクトンなどがあって海の透明度はそんなによくないのです。そんな条件の中で貴重な海の動物たちを息子さんは追っています。

渓流のダイバー 撮影成功!

カワガラスは見かけによらず水中で泳ぐことができる鳥です。「渓流のダイバー」「川底を歩く!?」と称されるその姿の撮影に試行錯誤を繰り返しました。石井さんは水中でもハイスピードカメラが撮影できるように日曜大工で特製の水中撮影ケースを作ってくれました。息子さんは川底に小型カメラを仕掛けます。 石井さん親子が次々と挑むアイデアで、カワガラスの多様な表情を撮影することができました。その中でもスタッフ一同が驚いたのは、大好物の水生昆虫を獲るために、自分の体よりも大きな石を、カワガラスがひっくり返してしまう瞬間でした。普段ですと、川を出入りする姿しか見ることのできないカワガラスの水中での大技、映像で是非ご覧ください。

大自然の小さな命

カワガラスの寿命は4年ほどと言われています。数十年を生きるヒグマや、私たち人間と比べると短い一生です。その一生の間に子孫を残すためにカワガラスは体を張った子育てをしていました。世界自然遺産に登録された知床の大自然も、カワガラスを含む1つ1つの小さな命から始まっていることを改めて気付かせてくれました。