わたし ライチョウ 雪の鳥

第158回「わたし ライチョウ 雪の鳥」

2009/7/26(日)午後7時30分~

今回の舞台は、3000メートル級の山々が連なる北アルプスの立山。積雪20メートルにも達する世界有数の豪雪地帯です。気温は氷点下20度、強風の吹き荒れる極寒の世界。そんな苛酷な高山にライチョウは生きています。はるか氷河期に北極圏からやってきて、寒冷な高山で生き続けてきた“氷河期の生き残り”であり、国の特別天然記念物でもあります。一年を通して高山で暮らす、日本で唯一の鳥です。この鳥は雪山で生きるための工夫をいくつも持っています。体をまりのように膨らませることで、全身を覆う羽毛に空気を蓄え体温を保ちます。さらに足の裏まで羽毛がびっしりと生え、雪の上をスムーズに歩くための“スキー板”の役割も果たしています。そして時には自分から雪に潜って“暖をとる”ほどの雪のスペシャリストです。この鳥の一年は、雪にまつわるドラマの連続。5月、雪どけで山肌にハイマツが現れると、オスたちの恋のバトルが始まります。なわばりを構えるためには、激しい陣取り合戦に勝ち残らなければいけません。キック、咬みつき、相手の羽根をむしり取るなど壮絶なけんかが繰り広げられます。7月、ヒナが誕生。ヒナは生まれてすぐに歩き出し自分で食べ物を探します。誕生の3ヵ月後には雪が降るため、急いで成長する必要があるからです。8月、ようやく立山の雪がすべてなくなる頃、お花畑が一斉に広がります。ヒナたちは、花に集まる虫を積極的に食べて急成長します。そして、雪が降り出す10月には親元を離れ、初めての冬を迎えます。雄大な北アルプス立山の四季とともに雪の鳥・ライチョウの物語を見つめました。

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取材こぼれ話

北アルプス立山 編

「雪の鳥」を探せ!

標高2000メートル以上の限られた高山で一年中暮らす鳥、ライチョウ。夏は登山などで姿を見かけることがありますが、冬はいったいどんな暮らしをしているんでしょうか。「謎に包まれた冬の暮らしぶりを撮りたい!」という思いを抱き、私たちはライチョウが数多く生息する北アルプスの立山に入りました。 しかし、立山にたどりついた初日から猛吹雪。気温は氷点下20度。日本海から吹きつける強風のため、立っているだけで吹き飛ばされそうです。体感温度は氷点下40度まで下がります。想像以上の寒さと風の強さに「いったいライチョウたちは、こんな極寒の厳しい世界でどうして生きていられるのか?」と、謎はますます深まりました。 ようやく吹雪が止んだのは入山4日目。さっそくライチョウ探しのスタートです。しかし、いきなりロケ隊の行く手を拒むものが!それは、大量の雪です。立山一帯は世界屈指の豪雪地帯。深いところで20メートルも雪が吹き溜まります。しかも、ふっかふかのパウダースノー。私たちはスキーやカンジキを装着して探し回ったのですが、一歩一歩前進するだけで一苦労でした。果たしてこんな調子でライチョウを見つけることが出来るのか、不安がよぎります。でも、同行していただいた研究者から嬉しい情報がありました。「冬、ライチョウは滅多に飛ばない」というのです。飛ばずに歩くことで体力を温存するためなんだそうです。おかげで、雪の上には足跡がくっきり!その跡をひたすら辿ってみると、、、ついにライチョウを発見!雪に溶け込むかのような純白の姿は、まさに「雪の鳥」と呼ぶのにふさわしいものでした。今回のロケでは、極寒の冬山を生き抜く技の数々も撮影に成功しました。

雪に埋もれている姿を撮りたい!

私たちには、どうしても撮影したいライチョウの“ある行動”がありました。情報源は長年ライチョウを調査してきた研究者。その方によると、吹雪の夜などにライチョウが「雪に埋もれながら夜を過ごす」というのです。鳥が雪に埋もれる姿を撮影しようとプランを練るディレクター。そこに、大きな問題が立ちはだかりました。そもそもライチョウは雪と見分けがつかないほど純白の姿。そんな鳥が雪のなかに埋もれてしまったら、いったいどうやって見つければよいのか?唯一の手がかりは、黒い目とくちばしだけ。う〜ん、困った!   それでも気合を入れて、私たちは日が昇る前から一面真っ白の世界に“黒い点”を見つけるべく、ひたすら探し回りました。当然ながら、そう簡単に見つかるはずもありません。たとえ“黒い点”を見つけても、たまたま雪からはみ出した枯れ枝や枯葉などばかり。日に日に気力体力が奪われていき、しかも真っ白の雪をず〜っと目を凝らして見ているので、目の具合も思わしくありません。 冬山で撮影を始めてから12日目、撮影隊の誰もが「もう駄目かな」とあきらめかけた、その時でした。ディレクターが雪の斜面で微妙に動く“黒い点”を発見。そ〜っと近づいてみると、、、首まですっぽり雪に埋もれたライチョウでした!おそらく世界で初めてとらえたお宝映像です。

立山での一年を見つめて

今回、私たちは1年にわたって立山に生きるライチョウを撮影してきました。春、雪が解け始めると同時に、ライチョウたちにも恋の季節が到来。夏、ヒナが誕生する頃、立山から雪がすべて消えお花畑が広がります。お花畑にはヒナの成長を支えるごちそうが!雪の鳥ライチョウの一年には、そのすべてに雪にまつわるドラマがありました。厳しくも美しい立山の四季の移ろいと、たくましく生きるライチョウの姿、どうぞご期待ください。