築百年!小鳥の巨大マンション

第153回「築百年!小鳥の巨大マンション」

2009/6/14(日)午後7時30分~

アフリカ南部、ナミビアの乾燥地帯。巨大な枯れ草の塊をつけた不思議な大木が点在しています。重さ1トン、世界最大級の鳥の巣、シャカイハタオリの巣です。
巣には百以上の巣穴があり、スズメ大の小鳥シャカイハタオリが3百羽も暮らしています。そう、枯れ草の塊は小鳥の巨大マンション、しかも百年以上も使われ続ける「伝統建築」だったんです。
それを支えているのは、住人たちの地道なメンテナンス。枯れ草を1本1本ちぎって運んできてはすき間に差し込んでいきます。日中の活動時間の大半を巣作りやメンテナンスについやしていました。時々一部が壊れ落ちてしまいますが、シャカイハタオリはその都度、協力し合って壊れた部分を直します。作っては壊れ、壊れては作り続けて、巨大な巣に百年も住み続けてきたのです。
でもなぜ小さな鳥が、こんな大きな巣を作るのでしょうか? 詳しく調べてみると、アフリカの厳しい乾燥の大地を小さな鳥が生き抜くのに、巣の大きさが重要な意味を持っていることが分かりました。温度を色で現すカメラで巣穴を見てみると、外の気温が40度にもなる昼は涼しく、0度以下まで下がる夜は暖かく、1日中快適な温度に保たれていることが分かったのです。ここで大きな巣材が、断熱材の役割を果たしていました。シャカイハタオリの巨大マンションはまさに、乾燥地帯のオアシスなのです。
でも快適な巣には、「招かざる客」たちが集まってきてしまいます。毒ヘビやハヤブサなどが、ヒナや巣を目当てにやってくるのです。外敵の襲来に対し、シャカイハタオリは巣のメンバーが一致団結して立ち向かいます。
巣に徹底密着して、様々な角度からシャカイハタオリの生態を撮影。巨大な「わが家」を作り、懸命に生きる小鳥たちの物語を描きました。

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取材こぼれ話

ナミビア 編

「ナンバー1」を探せ!

重さ1トン以上、世界最大級の巣をつくるシャカイハタオリ。「乾燥地帯の過酷な自然から小さな身を守るため、シャカイハタオリが懸命に大きな巣を作る様子を撮りたい!」と、撮影プランを描くディレクター。シャカイハタオリが多く生息している国・ナミビアで、現地スタッフがまさに現場を「駆け回って」、条件に合う巣を下調べ(いわゆるロケハン)することになりました。 数日間探し回ったスタッフ、ここで最初の難関にぶつかりました。 「砂漠に近いほど生えている木が小さいので、巣も小ぶりです! 大きな巣は大木のある、少し草が生えているような場所にしかありません!」 ガーン・・・。考えてみれば、そりゃ、そうです。砂漠のど真ん中に、大木なんて生えていないですからね。 「それでも、どこかに探し求めている巨大巣はあるハズだ!」 約10日間で2 000キロ以上移動し、200本を超える巣を見て回ったスタッフ。最後に訪ねた地で、探し求めていた「巨大巣」に出会いました。荒涼とした大地に、ポツンと生える大木。そこに、よくせん定された盆栽のような、美しい巨大巣がかかっていたんです。 ナミビア全土を探し回ってついに見つけた「ベスト・オブ・ザ・ベスト」な巨大巣の姿。番組でたっぷりとお楽しみ下さい!

でっかく撮りたい!

ベストな巣を見つけたところで、次に撮影方法の検討です。もちろん、望遠レンズできっちりと生態をおさえるのがメインなのですが、巣のすごさを表現するには、撮り方に工夫も必要です。 今回は巣の大きさを表現するために、クレーンを使った撮影を考えていました。「高さ10メートルの大木に届くクレーンを使って、大平原から木へと降りてくるようなカットを…」なんて、撮影プランを思い描くディレクター。 しかし何でもそろっている日本とは違い、ここはアフリカ。なかなか思うように機材はそろいません。う〜ん、困った! そこで再び現地スタッフの登場! 何と、撮影用クレーンを自作する、と言うんです。 しかしクレーンは精密装置。画面の水平をとったり、スムーズに動作させたり、素人が簡単に作れるモノではありません。 「大丈夫、機械モノは強いんで、自信はありますよ!」と言うスタッフ。 ならば、とお任せしたその日からクレーン作りに没頭すること、何とひと月! 文献を集めて設計し、鋼材を買い集め溶接、試行錯誤を繰り返した末に、ついに自力で完成させたんです。 メールで送られてきた完成写真は、日本側スタッフの想像を超えた、かなり本格的なクレーン装置でした。頼んだクレーンが失敗作だった時に備え、ひそかに手配していた小型クレーンを急きょキャンセルしたのは、彼にはナイショです。 現地で使ってみても、これはすごい! ちょっとの風なら揺れないし、動きもとてもスムーズ。経験豊富なカメラマンも大満足の出来でした。 日本と違ってナミビアでは、車や機械が壊れても、すぐ修理する人が来てくれるとは限りません。ちょっとくらいの故障なら自分で直せないと、仕事が進まないんだそうです。だから自然と、機械に強くなるのかも知れません。日本では何でも他人任せなところがありますが、ちょっと反省です。 このスタッフは「次の君たちの撮影のときは、もっと大きなカメラが載せられるクレーンを作るよ」と、嬉しそうにプランを話してくれました。

雨が降りすぎても困る!

撮影を進めていくにつれて、シャカイハタオリは、とても微妙なバランスの上で暮らしている鳥だということを実感しました。それは彼らが生息するために必要な条件を見るとわかります。 (条件1) 巣をかけるための、どっしりとした大木が生えていること (条件2) 巣の材料になる枯れ草が生えていること (条件3) 食べものである小さな虫がいること (条件4) 乾燥した気候 1〜3については納得いただけると思いますが、4はむしろ条件が逆な気がしますよね? でも、これもまた大事な条件なんです。 そもそもシャカイハタオリは巨大な巣をつくって、乾燥地帯の厳しい自然環境を生き抜いてきました。年間の最高気温は40℃、最低気温は−20℃。1日の寒暖差も非常に激しいところです。もっと気候の穏やかな地域で暮らせばいいのに、と思うのですが、巨大巣と共に暮らす彼らにその選択肢はありません。 と言うのも、シャカイハタオリの巣は100%天然素材。枯れ草と木の枝をすき間に差し込んで作ります。だから実は湿気にとても弱く、雨が降り続くと腐ってしまいます。「乾燥した気候」は、巨大巣を守るために重要なんです。 でもかといって、完全な砂漠地帯では条件1〜3が成立しません。雨は降らなきゃいけないけれど、あまり降っても困る。この「微妙なバランス」が必要条件です。 私たちが撮影した地域では「今年の雨季は、普段の3倍の降水量だ」と地元の人が言っていました。「去年の雨は平年の半分、その前は2倍。雨の降り方が年によってまちまちになってきている」とその人は言います。きちんとしたデータをとらないと分かりませんが、温暖化に伴う気候変動がこんな所にも現れているのかも知れません。 暴風雨のあった翌日、巣を見回ると、残念ながらいくつかの巣が崩落していました。水分を含んで重たくなった巣を、枝が支えきれなかったんです。 代々、ひとつの巣を守り続けるシャカイハタオリ。万一、私たちの暮らしが彼らのマイホームである築百年以上の巨大巣を脅かしていたとしたら…と、落ちた巣を前に、考えずにはいられませんでした。