いのち短し!イカ波乱万丈

第132回「いのち短し!イカ波乱万丈」

2009/1/18(日)午後7時30分~

今回の主役は、食卓でもおなじみのイカです。イカが普段どんな暮らしを送っているかなんて、皆さんあまり知らないのではないのでしょうか?
舞台は静岡県、西伊豆の海。海藻のマメタワラが生い茂る浅瀬に、毎年春、アオリイカが訪れます。体長は50センチほどです。巨大なヒレと水のジェット噴射を使い分け、水中を優雅に漂ったり、ロケットのように突き進んだり、水中を自在に泳ぎまわります。なんと、アオリイカの寿命は、わずか1年。その生涯は波乱に満ちています。繁殖の時期には、海藻の森にアオリイカが大集合し、メスをめぐるオスたちの一大バトルが始まります。カップルの間にロケットのように突き進み、強引に割り込むオス。邪魔をされたオスは大きなヒレを広げてライバルを威嚇します。時には噛み付き合いになり、腕を食いちぎられたり、命を落とすものもいるという壮絶な戦いなんです。
産卵するメスは、マメタワラの株をかきわけ、その奥に卵が入った房を産み付けます。大きなヒレを巧みに使って潮に流されないよう体のバランスを保ち、十本の腕で卵の房を器用にマメダワラに巻きつけていきます。そして、産卵が終わるとすぐに、オスもメスも短い生涯を終えてしまいます。
6月末、卵から赤ちゃんが誕生します。生まれた直後から、タイやメバルなど肉食魚の猛攻撃を受け、弱肉強食の世界にいきなり放り込まれます。赤ちゃんは目くらましの墨を吐いて必死に逃げ回りますが、無事大人になれる確率はわずか1パーセント未満。短い一生を駆け抜けるアオリイカ、波瀾万丈の物語です!

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取材こぼれ話

静岡県西伊豆 編

知らなかった!身近なイカの暮らしぶり

今回の主人公、アオリイカは、北海道南部から沖縄まで日本各地の海で見られ、お寿司屋さんの握りでも人気メニューという、 私たちの生活にとても身近なイカです。しかし、取材を始めてみると、意外に知らないことばかり。 まず、大きさ50セン程になるにもかかわらず、寿命はたった1年しかない、ということ。これには驚きました。 他にも、特徴である大きなヒレを、狩りや産卵などの様々な局面で器用に使っていること。オスはメスをめぐり命がけで 戦うこと。さらには、誕生と同時に天敵の魚から猛攻撃を受ける赤ちゃんの壮絶なサバイバル・・・・・・ ゆらゆらとお気楽に海の中を泳いでいるだけかと思っていたら、波乱万丈の短い生涯を懸命に生きていたんです。

粘り勝ち!狩りの瞬間をカメラがとらえた

撮影を担当したカメラマンは、30年以上にわたり、世界中の海であらゆる生きものの生態を撮影してきました。 その経験豊富なカメラマンをもってしても、撮影に苦労したのが、アオリイカのハンティングのシーンです。 普段は警戒心が強く、人間が近付くとすぐに逃げてしまうんです。しかも、ハンティングは、見通しの悪い、いりくんだ海藻の森の中で、一瞬で行われます。 捕まえた魚を抱えて泳ぐイカは見ることができても、ハンティングの瞬間をとらえるのは至難の業です。でも、番組では 狩りのシーンは必要不可欠。「絶対に撮ってやる!」カメラマンは、朝6時から夜9時まで、海から上がってきません。 結果は、粘り勝ち。2週間後、満面の笑みで海から上がってきたカメラマンからテープをもらうと、 そこには、ロウトと呼ばれる管から水をジェット噴射して突き進んだり、大きなヒレを巧みに動かして慎重に忍び寄ったり、 高い運動能力を持つアオリイカならではの狩りの様子が収められていたのです。

超接近! アオリイカ大産卵

産卵シーンの撮影の裏にも苦労がありました。アオリイカのメスは、海藻の株の奥深くに卵を産みつけます。ハンティングのときよりは、比較的近付きやすいのですが、海藻の奥で何をしているのか、外から見ているだけではなかなか分かりません。そこで、考え付いたのが無人カメラ。カメラが浮きもせず、沈みもしないように浮力を微妙に調整し、卵を産みそうな海藻の中にしかけてみました。すると、10本の腕を巧みに使って卵を産みつける様子や、産卵中はヒレを使って体のバランスをとっている様子などを、ほんの数センチという至近距離から撮影することに成功しました。 産卵を終えるとすぐに、アオリイカはたった1年という生涯に幕を下ろします。短い生涯を懸命に生きるその姿に、命の尊さを痛感しながらのロケでした。