シリーズ 南米の珍獣(2)なが〜い顔でラブ&ピース

第122回「シリーズ 南米の珍獣(2)なが〜い顔でラブ&ピース」

2008/10/26(日)午後7時30分~

舞台はブラジル中央部。無数のアリ塚が立ち並ぶ大草原地帯に、今回の主役・オオアリクイが暮らしています。細くて長い顔、ほとんど開かない口、60センチもある長い舌。指先の鋭いツメとフサフサと毛の生えた巨大なしっぽ・・・ほかのどんな動物とも似ていない、不思議な姿です。
オオアリクイはその名の通り、アリを食う生きもの。頭からしっぽまで2メートルもある巨体を、シロアリやアリばかりの食事で支えています。実はその食べかたも、とてもユニーク。まず、鋭いツメで硬いアリ塚の表面をなぞり、小さな穴をあけます。穴の奥には、無数のシロアリが暮らしているのです。オオアリクイは穴に口をつけると、長い舌を猛烈な勢いで出し入れします。舌を出入りさせる速さは1分間になんと150回! 舌にアリをくっつけると、次の瞬間にはもうお腹の中に納めてしまうのです。
やることも見た目も変わっているオオアリクイ。今回、大草原で長期間の密着取材を続ける中で、その生き方を貫くひとつのキーワードを発見しました。それは「愛と平和」。お母さんが赤ちゃんを1日中しかも1年間ずっとおんぶし続ける愛情あふれる子育て。猛獣ジャガーさえ倒す立派なツメを持っていながら、滅多に争いをしない平和的な性格。「愛と平和」を体現した、オオアリクイの知られざる素顔に迫りました。

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取材こぼれ話

ブラジル2 編

だ〜るまさんが、こ〜ろんだ!

世にも不思議な姿のオオアリクイ、実は視力があまりよくありません。いったいどうやって周りを見ているのか、というと・・・。実は、ニオイです。嗅覚はなんと人間の40倍もあるんですよ〜! オオアリクイの姿をできるだけ間近で、しかも相手を驚かさずにとらえたい! 今回、撮影スタッフがとった作戦は・・・「だるまさんが転んだ」作戦でした。 まずは大草原を移動しながら、双眼鏡でオオアリクイの姿を探します。はるかかなたに黒っぽいモジャモジャとした姿が見えたら・・・まずは風向きをみます。ニオイは風に乗って運ばれるので、風下から少しずつ近づくのです。近づくのは最低人数、カメラマンとディレクターの2人です。300m、200m、100m・・・と、距離を縮めるたびに風の方向を確認。足場は湿地でぬかるんでいて、長靴の中まで水でグジュグジュ・・・でも泣き言なんて言っていられません。 そして50mを切ると「抜き足、差し足・・・」で近づきます。オオアリクイが顔を下げてアリやシロアリを探しているうちに近づき、ふと顔を上げるとそこでストップ。視力が弱くても動くものには反応するためです。 そっと進んで・・・ストップ! 進んで・・・ストップ。遠くから見ていた別のスタッフによると、その様子はまるで「だるまさんが転んだ」遊びのようだったそうです。本人たちは至って真剣なんですが・・・。 こうして大接近して撮影に成功した迫力のオオアリクイ映像も、物語とともにお楽しみ下さい。

ジャガーVSオオアリクイ

ジャガーといえば中南米最強の肉食獣。オオアリクイにとっては最も恐ろしい天敵です。噛む力がとりわけ強く、獲物をひとっ飛びで仕留めてしまうことができます。襲われてしまったオオアリクイは全く歯が立たないだろう、と思いきや、今回の取材で意外な話を聞きました。 襲われそうになると、オオアリクイは2本足で立ち上がって、前足の鋭いツメをかざして威嚇する、そして相手の体にツメを食い込ませる。もしツメが内臓に達した場合、ジャガーが決定的なダメージを受けることがあるのだと言うんです。ジャガーとオオアリクイが相打ちで死んでいたのを見たことがある、という地元の人もいるくらいです。 撮影中、無惨にもジャガーに襲われたとおぼしきオオアリクイの死体に遭遇したこともありました。あたりの草はなぎ倒されていて、そこにオオアリクイの長い毛が散らばり、壮絶な格闘の様子が想像されます。 普段はアリやシロアリを食べて平和に暮らしているオオアリクイですが、大自然で生きている以上、こんな厳しさと背中合わせなんですね。

ママを亡くした赤ちゃん

取材でおじゃました、野生動物の保護施設。ここでとっても愛くるしくて、とってもかわいそうなオオアリクイに出会いました。生後2か月の、ジュニオール君です。 オオアリクイは生まれてから1年間、ママの背中におんぶされて育ちます。どこに行くのにも必ずママと一緒、とっても愛情たっぷりの子育てなんですが…。ジュニオール君は1匹。ママを交通事故で亡くしてしまったためです。 取材中、私たちは道ばたで命を落としていたオオアリクイを、2ヶ月間で3匹も見つけてしまいました。どれも交通事故が原因です。統計はとられていませんが、ブラジル全土合わせると、相当数のオオアリクイが交通事故によって被害を受けていることが予想できます。 「オオアルマジロ」の回でもご紹介したとおり、ブラジルの草原地帯は大規模な開発が進められていて、野生動物が安心して暮らせる場所がほとんど皆無となりつつあります。これは大豆やトウモロコシなど農作物の生産と共に、石油に代わるエネルギーとして注目を集める「バイオエタノール」の原料としての農作物の生産のためであります。 番組で紹介するジュニオール君の悲劇は、地球の反対側に暮らす私たちの暮らしと、どこかでつながっているんです。