神秘!砂漠の水中世界

第108回「神秘!砂漠の水中世界」

2008/7/6(日)午後7時30分~

メキシコ北部に広がるチワワ砂漠。その真ん中のクアトロ・シエネガス(スペイン語で「4つの沼」という意味)と呼ばれる一帯に、200にも及ぶ泉が点々と湧き出しています。青く澄み切った水は透明度50m。一年中涸れることのない豊富な湧水は、数百キロ離れたシエラマドレ山脈から、地底を約1万年もかかってもたらされるものです。つまり現在湧き出している水は氷河期に地中にしみ込んだものということになります。
泉の中には19種類もの魚が群れ泳ぎます。この魚たち、川とも一切つながっていない砂漠の泉に、どこからどのようにやって来たのか? 実は、“泉ごと動いて来た”のではないかと考えられています。元々、泉は川とつながっていました。ところが、泉は、底にすむ大量の巻き貝の排泄物や死んだ後に残る貝殻などで徐々に埋め立てられていくことがあります。一方、地下水が流れている地面は地下が空洞になっているため、陥没して新しい泉が生まれることもあります。埋め立てられつつある泉の近くに、たまたま新たな泉が生まれると、魚は水と共に新たな泉に移動します。そうした偶然が長い時間の中で重なって、泉が魚ごと現在の位置に移動してきたのではないかと考えられるのです。
ここの泉はまた、「砂漠のガラパゴス」とも呼ばれています。19種類の魚のうち8種類は、世界中でここだけにすむ固有の種。その1種、カワスズメの仲間ミンクリイは、外見上は見分けがつかないが、食べ物の違う3つのタイプに分かれています。巻き貝を食べるタイプ、底に堆積した有機物を食べるタイプ、小魚を捕食するタイプです。これら3タイプは、のどの奥の咽頭歯(いんとうし)と呼ばれる特殊な歯の大きさが、食べ物の固さに応じて大きく異なっています。これは、砂漠の泉という隔絶された環境の中で限られた食べ物を有効利用するために、1種から3種に分かれつつある過程だと考えられています。進化の途上を目の当たりにすることができる、世界でも希有なケースとして注目されているのです。
泉で発見された、地球に酸素を生み出したラン藻・ストロマトライトや、チワワ地方が原産地と言われる人気犬チワワ誕生の秘密も紹介しました。

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