熱血!ミーアキャット先生

第107回「熱血!ミーアキャット先生」

2008/6/29(日)午後7時30分~

ミーアキャットはアフリカ南部のカラハリ砂漠に生息するマングースの仲間。地下に巣穴を掘り、家族で暮らしています。家族は、互いに血縁関係にあるメスたちとその子供たち、それに別の群れから「婿入り」してきたオスで構成されています。メスのうち、子供を産むのはリーダーだけ。リーダーが産んだ子供を、家族全員で面倒を見ます。子守はもちろん、授乳や餌運びまで、すべて家族で協力して行います。
過酷な砂漠で生きるミーアキャットの食べものは昆虫や爬虫類。中でも大好物は猛毒を持つサソリ。過酷な砂漠という環境では、何でも獲物にできる能力がなければ生き残れないのです。危険な獲物を仕留めるには、経験がモノを言います。短時間で急所を一撃にしないと毒針に刺されてしまいかねません。ミーアキャットは子供のころから、群のメンバーに獲物の捕り方を教えてもらい、一人前のハンターに成長していきます。
生後一月。巣穴から出た直後から、子供たちへの教育が始まります。自力で狩りをできない子供たちに、群れの大人が獲物を運んでくるとき、ハンター養成講座が始まるのです。そのステップは、(1)死んだ獲物を渡され、食べ物の味を覚える訓練、(2)毒針をとった獲物を渡され、自力で仕留めて食べる訓練、(3)元気な獲物を渡され、自力で仕留めて食べる訓練、の3段階。大人たちは、子供が食べ終わるまで側に寄り添い、もし子供が獲物に手を出さないようなら、獲物を子供の口元に近づけたり、獲物の動きを鈍らせたりして、子供が課題を克服できるように教育します。成長に合わせて難易度の異なる課題を与えながら教育をする生き物は、他に確認されていません。ミーアキャットでこうした「教育」がみられるのは、主食がサソリとあまりにも危険なため、見よう見まねだけでは学習できないからだと考えられています。

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取材こぼれ話

南アフリカ・カラハリ砂漠 編

かわいい!ミーアキャットの赤ちゃんたち

南アフリカ・カラハリ砂漠。夏の日中は気温が50度にもなる灼熱の大地に生きるミーアキャット。2年前に人間以外のほ乳類では、初めて発見された大人が赤ちゃんたちに「教育」する行動とはどんなものなのか、番組では解き明かしていきます。

世界でもまれに見る人と野生生物が接近できる場所

撮影を行ったのは、アフリカ南部の中央に広がるカラハリ砂漠。 日本からだと南アフリカ最大の都市ヨハネスブルグ経由で人口5万人の地方都市アッピントンまで飛行機で向かい(そこまで2泊3日)、そこから車で4時間ほど、カラハリ砂漠の真っ只中へと進んでいきます。その中のクルマン川保護区と呼ばれる広さ32平方キロメートルほどの場所でミーアキャットの撮影を行いました。 この場所は、イギリスのケンブリッジ大学の研究者たちが14年前に農場をまるごと一つ譲り受けて、研究のためのフィールドにしている場所。クルマンミーアキャットプロジェクトと名づけられています。現在、17の群れ、200匹あまりに密着して、研究を続けています。世界各国から集まった研究者が、毎日全員の体重測定、行動追跡して、様々な研究テーマで、ほ乳類の社会の起源とはどんなものだったのかを探っています。ずーっと研究者がいっしょにいるので、今ではすぐ間近まで近づけるようになりました。私たちの頭の上に登ってしまうことも。

数十年に一度の大雨

「砂漠」と名前のついた場所にも関わらず、撮影期間の中盤は、夕方になると雨ばかり。さっきまで雲ひとつなかったのが急に曇りだし、雷が鳴り雨が降りだすなんていうことはしょっちゅうです。気温も激変。早朝は20度だったものが、朝9時過ぎには、 50度まで上がってしまいます。しかし、乾燥しているので、意外と快適。洗濯物を屋内に干していても数時間で乾きます。そんな場所にミーアキャットは暮らしているんです。

趣味は「警戒」?

ミーアキャットを撮影していて強く感じたことは、ミーアキャットはいつも警戒してばかりいるということ。ミーアキャットの家族を撮影していると、みんなが突然立ち上がり、走り出して手近な穴に隠れることがしばしばあります。上を見上げたミーアキャットの視線の先を追うと、そこには鳥が飛んでいます。晴れた日は毎朝9時ごろになると、必ずワシやタカが上空に舞うんです。 でも、ミーアキャットが警戒するのは、天敵から身を守るためだけではありません。家畜のブタに出会ったり、ダチョウに出会ったりしても、なんの危険もないのに警戒!その用心深さがカラハリ砂漠を生き抜いてくるのに必要だったんだろうと思いました。

どうやって「教育」を映像に?

撮影をしていく上で最大の課題が、「教育」があまりに一瞬で行われること! ミーアキャットの大人が赤ちゃんのためにサソリを持ってくるんですが、何の前触れもなく大人が赤ちゃんのところに走ってくるんです。普段の年であれば、群れの真ん中で望遠レンズを構えて、走ってくる大人を待っていればいいんですが、今年は、雨が多くて草だらけ! 遠くからでは、ミーアキャットがどこにいるかもよくわかりません。そこで今回は、肝心のシーンがほとんど三脚をつけず、手持ちで接近しての撮影となりました。突然走ってくる大人の姿をとらえるために、大活躍したのがカメラの「ループレック」という機能です。現在撮影に使っているカメラには、録画ボタンを押す7秒前からの映像を残すことができます。大人が走ってくるのに気づいてから撮影を始めても、その前の走ってくる途中の映像を残すことができるんです。

生きものにとって「教育」って?

ミーアキャットの「教育」を間近に見続けたことで、逆に人間がみんな「教育してる」っていうのが、いかにスゴイことかと感じることができました。 成長に合わせて難易度の異なる課題を与えながら教育をする生き物は、他に確認されていません。ミーアキャットでこうした「教育」がみられるのは、主食がサソリとあまりにも危険なため、見よう見まねだけでは学習できないからだと考えられています。 番組では、人間以外のほ乳類では初めて発見された「教える」という行動を、世界で初めて詳細に映像化しました。レンズの目の前で、自然のままの姿をみせるミーアキャットたちを見ていただければと思います。