まるでイソップ?札幌リス物語

第104回「まるでイソップ?札幌リス物語」

2008/6/1(日)午後7時30分~

人口およそ190万の北海道札幌市。大都会のすぐ隣には、明治の開拓期から大切に守られてきた深い森が広がっています。この森にすむのがシマリスとエゾリスです。
2種類のリスの暮らしぶりは、まるでイソップ物語の「アリとキリギリス」にそっくり。シマリスは体長が13センチほど、ふだんは地面で草の種や花を集めて食べますが、秋になるとドングリを大きなほお袋に詰めて、地中に掘った巣穴までせっせと運び込みます。その行動はまさにアリのようです。一方のエゾリスは体長25センチ、ふだんは木の上でクルミなどを食べて過ごし、秋になっても変わらずに木の実を次から次へと食べ続けます。こちらはまるでキリギリス。
冬になるとそれぞれの暮らしは一変します。秋にずっと食べ続けていたエゾリスは、雪の森をかけ回りながら懸命に食べ物を探します。天敵のキタキツネにおびえたり、枝に積もった雪に滑って木の上から落ちたり、危険いっぱいの森で必死に生きようとします。ところが地中の巣穴に潜ったシマリスは、秋に貯えておいたドングリに囲まれ、のんびりと食事をしながら過ごすのです。
共に同じ森にすみながら、まったく異なる生活をする2種類のリスを、秋から春にかけて札幌の森で見つめました。

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取材こぼれ話

北海道 札幌市 編

ロケ地は目と鼻の先

札幌と聞くと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。時計台、クラーク像、雪まつり、みそラーメン、カニ…。どちらかというと観光やグルメのイメージが強いかもしれません。でも実は札幌は、まちの至る所に緑があふれ、深い森に周囲をかこまれた、自然豊かな大都市なんです。 通常、自然番組のロケといえば現場に入るまで何時間も、時には何日もかかったりするものですが、今回、主に撮影をしたのは、まちの中心から自転車で20分ほどのところにある山でした(と言っても、自転車でロケに行っていたわけではありませんが)。 そんなわけで、刑事ドラマよろしく「現場百回!」の意気込みで足しげく通いました。すると地元の人たちとも顔なじみになっていきます。犬の散歩をするご夫婦や登山者、動物を撮影するアマチュアカメラマン、さらには遠足に来た子どもたち。ロケでは、色々な方の目撃談が大きな力となりました。こうした協力があって、躍動感あふれるリスの映像を撮ることができたのです。地元の皆さん、本当にありがとうございました!

秋、リスの撮影は時間との勝負!

今回の番組では、同じ森にすむシマリスとエゾリスが冬に向けてまったく違う生活をしていくというのが狙いでした。「同じ森にすむ」ことを映像で表現するために一番いい方法は?それは、2種類のリスが一緒に映っている映像を撮影することです。ところが、普段エゾリスは木の上に、一方のシマリスは地上にいるため、2匹一緒の場面なんてそう簡単には出会えません。9月から撮影を開始したものの、思うようなシーンが撮れぬまま一ヶ月以上経過。するとだんだんシマリスに会う機会が減っていきました。 「ま、まずい!シマリスが冬眠し始めた!」 実はシマリスはドングリをたくさん集めると、地面の下の巣穴にこもって冬眠してしまうんです。しかも一度土の下に潜られたら、彼らに会えるのは半年先です。一匹また一匹と森から姿を消すシマリスたち。私たちは手分けしてシマリスを探すことにしました。カメラマンはリスの現れそうな場所でひたすら待機し、取材を手伝ってくれるリサーチャーとディレクターの私は2人で手分けして山頂からふもとまで歩き回りました。そして「そろそろ初雪が降る」と言われる頃、やっと木の実を巡ってにらみ合う2匹のリスを見つけました。こうして、二種類のリスが一緒に映る映像が撮れました。

冬、エゾリスはつらいよ… スタッフもつらいよ…

今年の札幌はほんとうに寒かったです!1月には、気温が一日中氷点下という日が19日連続でありました。しかも最低気温が氷点下10度なんてしょっちゅう、時には15度まで冷え込んだこともあります。 ちなみに冬の北海道は氷点下の日が多いため、気温が0度を超える日にはわざわざ「プラス××度」と言いますが、氷点下の日には「マイナス」を省略して単に「××度」としか言わないことが、日常生活ではよくあります。 この厳しい寒さはエゾリスにとってもつらいでしょうが、エゾリスを待つ私たちにとってもつらかったです。どれだけ厚着しても、冷気は体の芯までジンジン伝わってくるんですよね。森の中をあまり歩かなくても、ロケを終えて戻るともうグッタリ、という日々がずっと続きました。でも雪の森で懸命に生きるエゾリスの姿を見ると、なんだか元気をもらえるんです。だからどんなに寒くても「明日も森に行くぞ!」って頑張れたんだと思います。

2匹のリスはまるで「アリとキリギリス」?

秋はドングリを沢山集めて地下の巣穴にせっせと運び、冬には食べ物に囲まれながらのんびり暮らすシマリス。一方、秋にはごちそうをたっぷり食べるものの、冬になると食べ物探しで森を懸命に跳び回るエゾリス。2種類のリスを見ているうち、「なんだかイソップ物語のアリとキリギリスに似ているなぁ」という思いがわいてきました。そうして生まれたのが今回の番組です。北の森で共に生きるシマリスとエゾリス。小さな生きものを誰もが知っている物語になぞらえてみると、見事に大自然のドラマが描けました。 この番組のモチーフとなったイソップ物語「アリとキリギリス」についても取材を進めると、次から次へと新事実が出てきました。この意外な秘話も紹介します。