ミツバチお家騒動!

第068回「ミツバチお家騒動!」

2007/9/2(日)午後7時30分~

皆さんおなじみのミツバチ。里山の雑木林などに巣を作って暮らしています。花から花へ、ミツや花粉を求めて飛び回る様子はとても可愛らしいですよね。
でも毎年春になると決まって時代劇さながらの大騒動がわき起こります。巣のメンバーの半分が一気に巣を飛び出す「お家分裂」、新女王候補が毒針で殺し合う「お世継ぎ争い」、そして勝ち残った1匹がオスバチと結婚する「天空の結婚式」。わずか2週間の間に次々とお家騒動が起きるのです。
騒ぎは「お家分裂」から始まります。巣のメンバーの半分が女王バチとともに、一気に巣を飛び出して引っ越しするのです。1万匹のミツバチが羽をふるわせて空を飛び交う姿はまさに圧巻です!
でも女王バチのいなくなった巣では「お世継ぎ争い」が始まってしまいます。女王の候補者が何匹も同時に生まれてきて毒針で殺し合うのです。
そして勝ち残った1匹がオスバチと結婚するのですが、これが最大の難関。わざわざ天敵のツバメが飛び交うような危険な「結婚式場」に出かけて、そこで交尾して巣に帰るのです。もし女王バチが途中で死んでしまうとお家は断絶。果たして無事、巣に帰ることは出来るのでしょうか?
ミツバチに課せられた不思議な運命、知られざるお家大騒動の一部始終に大密着しました。

※画像クリックで拡大します

取材こぼれ話

丹沢山ろく 編

ミツバチの“結婚式場”って?

突然ですが、ここでクイズです。ニホンミツバチの女王バチとオスバチは、交尾のためにどうやって出会っているのか、次から選んで下さい。

1.同じ巣で暮らすオスバチと女王バチが交尾する
2.オスバチが近くの別の巣を探しだして、その巣にいる女王バチと交尾する
3.女王バチとオスバチだけのヒミツの結婚式場があり、そこで交尾する

動物好きの皆さんでも、意外と知らない方が多いんじゃないでしょうか?かく言う私(ディレクター)は今回の番組を担当するまで、そんなこと考えたこともありませんでした。

実は答えは3。「女王バチとオスバチだけのヒミツの結婚式場があり、そこで交尾する」んです! 「地上30メートルにもなる木の上空で、百匹ものオスが1匹の女王をすい星のように空中で取り囲んで交尾するんですよ!」 専門家の方々は、ニホンミツバチの「結婚式」をこのように熱く語ります。 でも1センチほどのミツバチが地上数十メートルを飛ぶ姿など、なかなか確認できません。研究者でさえ、交尾の瞬間を目撃した人はまだいないんです。まして映像化されたことなんて…。撮影のハードルは高い、でも何とか映像化したい! 私たちの仕事は撮影より先に、撮影現場を探し出すところから始まりました。

大発見! ニホンミツバチの結婚式場

ニホンミツバチの結婚式場は、これまで全国で2か所しか見つかっていませんでした。何しろ小さなミツバチを地上数十メートルの高さで飛んでいるかどうか調べるなんて、なかなか容易なことではないからです。 撮影を担当した自然カメラマンの吉田嗣郎さんは、これまでも様々なハチを撮影してきた経験から、丹沢山地のふもとの里山に、「結婚式場」の目星をつけていました。そして周辺を何カ所か調べていくうちに、一か所が有力な候補地として浮かび上がったのです。 地域の皆さんの協力を得て、私たちは果たしてこの場所が結婚式場になっているのかどうか、大きな風船を使って必死に調べました。さらにニホンミツバチを民間で研究されている日本在来種ミツバチの会の藤原誠太さんが、盛岡から手弁当で何度も駆けつけて下さり、色んなアドバイスをして頂きました。そして私たちはついに、女王バチの周りにすい星のように集まる百匹ほどのオスバチを目撃することが出来たんです。日本で3か所目となる、ニホンミツバチの結婚式場の発見でした。 すぐさま私たちは工事用の足場を組んで、ミツバチを間近で撮影できるようにセッティングしました。地上20メートル、ビルの6階あたりから眺めるのと同じ高さ。高いところが苦手じゃなくても、手に汗がにじんできます。まして撮影となると絶対に気を抜くことは出来ません。 そうしてとらえられた、とても珍しいニホンミツバチの結婚飛行の映像、番組でたっぷりとお見せします。

実は穏やか!ニホンミツバチの性格

撮影は空中の結婚式の様子と共に、巣の中でもおこなわなければなりません。でもハチの巣の撮影なんて聞いただけでも恐ろしい、という方も多いと思います。私も撮影が始まるまでは、ハチ刺されに対して相当の覚悟を決めていました。 でも…実はニホンミツバチは滅多に人を刺すことのない、とてもおとなしいハチだったんです。養蜂家の方に聞いてもこれは事実のようで、養蜂で活躍しているセイヨウミツバチと比べて、ニホンミツバチはとても「物静か」で「おとなしい」という印象があるようです。 今回の撮影ではいくつかのニホンミツバチの巣をまわって撮影しました。すると巣ごとにハチの性格が違うことに気付きました。一番分かりやすいのが、攻撃的かそうでないか、という点。近づくだけでも門番のハチがブンブン頭の周りを飛ぶ巣があれば、何時間巣の中をのぞいていても何のおとがめもなし、という巣もあります。 同じ種類のミツバチなのに、この違いはとっても不思議でした。これまで「昆虫」というと「機械的」というイメージが強かったのですが、ちょっと見る目が変わりました。おとなしい巣のミツバチなど特に可愛らしく感じて「この子たちはいい子たちだ」と、つい、ひいき目で見てしまいます。 ニホンミツバチは優しく接すれば、刺されることは滅多にありません。もし皆さんの近くで見つけても、必要以上に騒がないでぜひ優しく見守ってあげてください。

都会のニホンミツバチ

在来種であるニホンミツバチは雑木林の木のウロなどに巣を作ることが多いのですが、都会でもたくましく暮らしています。番組では詳しくご紹介できなかったのですが、都会のミツバチに魅せられた一般の方たちもいます。 東京都大田区の林儀彦さん(日本在来種みつばちの会)もその一人。5年ほど前からニホンミツバチへの興味がわき始め、飼育に挑戦するようになりました。いまでは区からミツバチの巣の駆除を依頼されるほどです。 駆除の依頼は年に15回ほど。巣が見つかるのは大木のウロだけでなく、お墓の納骨堂、住宅の床下や天井裏、ビル5階のサッシ、エアコンの排水口などなど実にさまざまです。私たちがおじゃましたときは、マンションの壁に大きな巣を作っていました。 「炭酸ガス等で眠らせて駆除するのかな?」と見ていると、林さんはなんと素手で巣を切り取り始めます。「この巣はおとなしいから大丈夫ですよ」と言いながら、あっという間に取り去りました。そしてハケで数千匹のミツバチをネットの中へ。これを用意していた巣箱へと入れ、作業終了。 「ニホンミツバチはとてもかわいらしくて、一日見ていても飽きない」という林さん。ご自宅の庭などに移して、これを飼われるのです。 「ニホンミツバチは貴重な種だし、駆除して殺してしまうのではなく少しでも自分の力で増やしたい」とおっしゃいます。秋にとれる濃厚なハチミツは、その「ごほうび」だとか。